■やっぱり、雪の油山 |
持ち帰った校正紙や書類あれこれ、それに何より暮らしのための買い物……思いとどまる理由には事欠かないが、これで行かなかったら、何のために毎日曜、ややハードなウォーキングをやっているのか分からない(「闘うウォーキング」)。その日その日、後悔したくない。
もう一つ、前夜2時まで掛かって、録画していた『アバター』を観てしまったのだが(封切り時以来)、あの野山や空を駆け巡る主人公たちの毒気に少し当てられた、という心理上の背景もあったかも知れない。あんなに素朴に、自由に生きられたらどんなにいいことか……。余計なことだが、この映画、次第次第にあの“彼女”(ネイティリ)に対して入れ込んでいく気持ちは、どうしたことだろう。映画が終わった時にはもうファンになっている。
油山観光道路(いかにも昭和の響きだな)を歩き、30分程で博多工業高校グラウンド裏の登山口に到着。期待したほど雪は積もっていない。上りと下りと、靴跡が一組。
真冬でも、登っていると汗をかく。だんだん「ヒートテック」の長袖を着てきたことを呪いたくなる。この場面ではクール何とかを着るべきだったか。
[市民の森・吊り橋]
*
途中、何組かの同行者と行き違ったが、油山山頂に達した時には先着者一人。足跡からすると20〜30人は登ってきたのではないか。
汗をかいていたこともあり、座ろうという気もおこらず、スーパーで買ったお握りをパクつき、魔法瓶のコーヒーで体を温める。だが、さすがに山頂の冷気と寒風は凄まじく、食事をとりながら素手で靴に軽アイゼンを取り付けようとして、指先の体温がどんどん奪われていくのが分かる。
少し薄暗くなってきたし、他に誰も居なくなったので、もう今日は山頂は“店仕舞い”かなと思ったら、ばらばらと幾グループかがやって来る。この時間だから、午後から思い立ったものか。
結局、私は山頂に5分しか居なかった。
[油山山頂より能古島、志賀島]
下りは妙見岩経由で油山観音へ。車道に出ると、雪はほとんど消えていた。
自宅から往復3時間半の行程。ジェイクやネイティリが跳び回ったり、ツタをたどって“浮かぶ島”によじ登ったりするのとは比較にならないけれど、10センチ程度の白銀の世界に遊ぶのもまた楽しからずや、だった。