■元気なアラ還他、今週の出来事をまとめて |
●昔の仲間、札幌より来たる
30年近く前、私が葦書房に所属していた終わり頃に一緒に仕事をした秦さんが、夫妻で来社された。秦さんはご主人の仕事の関係で福岡市を含めてあちこち転居、現在は札幌市在住、当地で永住するとのこと。
数年前から地元のシルバー劇団「演劇企画集団 銀の会」に加わり、ようやく今年、「参加条件60歳以上」を満たすことになり準会員→会員へ、「“女優”開眼、めざします!」と奮闘中。同会は今年1月に記念誌『輝いて──銀の会の10年』を刊行、その制作のお手伝いをしたことから、今回、阿蘇に行かれる途中の来福となった。
当然、近くの居酒屋で昔話に花を咲かせた。あんなに日本酒をグイグイと飲むアラ還女性を見たのは久し振りだ(否、初めてか)。どこか“過激な少女”ふうのところは変わらず、すこぶる気持ちが良かった。
途中、秦さんが、昔私から言われた言葉を幾つか覚えている、と。その一つは、「あなたは仕事をしている時は子供のことを考え、家にいる時は仕事のことを考えている」(当時秦家は、まだ長子一人の時期)というもの。母/仕事(自己)の両立に懸命だった人に対し何を言おうとしたのか……私には全く記憶がない(けれど、「いかにも言いそうだ」との同席者の声)。とりあえず、彼女にとって怨みとして残るシチュエーションでなかったらしいのは良かったが……。
まあ、ともかく「いつまでも輝いていたい」との想いを分かち合う一夜だった。

● 大利久美さんの競歩
もう5、6年になるだろうか、天気と都合が許す限り、私は毎日曜、自宅から2キロ程の距離にある池まで行き、そこを周回、往復を含めて15000歩・13キロを歩いている。多少ムキになる性分なのと週に一度は何かに全力を注ぎたい気持ちがあって、池を回っているうちに全速力となってしまう(「闘うウォーキング」)。
けれどこれは、あくまで散歩の延長のつもりなので、腕を上げてしっかりと振るような歩き方まではやらない。それに、競歩の試合を垣間見ても、(競技者の方には失礼ながら)あまりに禁欲的で苦しそうな印象が強い。あそこまでやって、いっそ走らないのがどれほど辛いことか。
それが、NHK番組「アスリートの魂:一歩一歩 美しく競歩 大利久美」を観て、少し印象が変わった。
大利久美さんはロンドン・オリンピックの競歩代表。高校陸上部の時、見よう見まねで競歩を始め、素質を見出されたとのこと。一流となっても常に一歩先にライバルがいて、「万年2位」と言われ続けてきたとのことだが、それでも慌てず、まずは自分のフォームを完成させたいと、徹底的なトレーニングを重ねる姿に感心した。
彼女の前脛骨筋(ぜんけいこつきん、脛外側の筋肉)の盛り上がりぶりには、自分のことと重ね合わせて深く納得(ジョギングとは筋肉の発達具合が少し違うのではないか)。
何より顔つきがいい。口をやや開け、真っすぐに前を見つめ、上半身をブラさずに、前へ、前へ──。その姿はもはや求道者だ。初めて競歩を美しいと思った。
彼女の記録は、20キロで1時間29分48秒(女子日本最高はもう105秒速い)。これは時速にすると約13.4キロ。今度そのつもりでやってみたいが、おそらく私の場合、1時間勝負でも7キロ。やっぱり速い!
●共同通信社からの贈り物
共同通信社は、新聞社に記事を配信する会社。そこから、1月刊行の松下竜一講演録『暗闇に耐える思想』の紹介記事を掲載してもらった全国各紙の紙面コピーが送られてきた。配信記事なので当然内容はほとんど同じなのだが、その数8紙、元の紙面に即してカラー・コピーまで入っている。
私もこの業界に36年いるが、このようなことは記憶にない。期間は3〜4月。手紙に名刺も添えられていて、送り主は編集局文化部の部長さん。
言うまでもないが、このような配慮(サービスと言うには、そもそも見返りがほとんど期待できない)や作業は結構面倒だ。どの出版社へもやっているかどうかは分からないが、煩を厭わぬ仕事振りには感激するとともに我が日常を振り返ってしまう。
ひょっとして松下ファンかも知れないし、さり気なく小社へエールを贈っていただいたのかも……などと勝手に考えてしまった。
[中國新聞」4月2日]

●岩永豊さんの「有明海」写真展
岩永豊氏(佐賀市在住)の写真集『有明海讃歌』(海鳥社、2007年)は、有明海風景、それに沿岸の暮らしや習俗などを収めたものだ。有明海を撮ってこれ以上のものをまとめるのはまず無理だろうし、一地域の全体を被写体にした写真集としても秀逸だ。
岩永さんの熱心かつ優しい人柄もあり、写真一枚一枚に込められた郷土愛を感じつつその編集にあたった期間は、私にとっても充実した時間だった。
その岩永さんが、福岡・天神ソラリアプラザ1階「ゼファ」にて「岩永豊写真展:有明海讃歌」を開いている(6月3日まで)。
会場を覗くと、ほとんどの光景は私も記憶しているものだが、岩永さんらしくプリントに相当力を入れられたようで、写真集とはまたひと味違った鮮明な色合いが出ていた。
岩永さんは今年3月に定年を迎え、今は好きなことをやれているが忙しくて痩せてしまった、と。とても精悍になり、さっぱりとした表情をされていた。男のアラ還もやっているではないか。
