■古書の葦書房、来年末で閉店 |
その宮さんが、2014年末をもって店を閉じることに決められた。来年で創業42年。
後継者がいないことが第一の理由、と。ここ数年、その意思は伺ってきたが、単に古書や古文書(こもんじょ)などの流通に留まらず、福岡の文化的な面で多大な貢献をされてきたことを思うと、やはり口惜しい。
なお、よく誤解されるようだが、出版の葦書房は全く別の会社(私も1977〜85年在籍)。出版社の葦書房は1970年創業で、実は古書の方より2年歴史が古い。さらに、古書の葦書房もひところ本を出版していたので、よけいに紛らわしい(ベースの業種が違うので同一屋号が認可されたのだが、さて、下世話ながらこれまで、会社を混同されてどちらがより得をしてきたことだろうか)。
取り急ぎ、宮さんから送られてきたばかりの『西日本文献目録』No.61(なんとA4判で578ページ)の表紙及び巻頭挨拶文を勝手に掲げておきたい。
なお、小社では「葦書房閉店記念誌」の刊行を計画している。

御挨拶
ことのほか厳しかった暑さも和らぎ、初秋の風が心地よい時候となりました。
皆様にはご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、突然ではございますが、私共の有限会社葦書房を来年末をもって閉じることに致しました。私も、来年は古稀を迎えるほど馬齢を重ねてまいりました。私たち夫婦は子供に恵まれず、後継者がいないため、私自身二、三年前から店仕舞いを考えていましたが、家内ともいろいろ協議した上での決定でございます。
そこで、近年における洋本をはじめとした古書価格崩壊の現実を踏まえ、在庫本をどのように処分するかを考えた時、これは偏に顧客様に還元しなければと思い至りました。しかし在庫品だけのバーゲンでは失礼にあたると思い、昨年末に出す予定だった目録を一年延ばして、写真版に載せる商品を積極的かつ精力的に集め、最後の編集割付中にも蒐集に努め追加と致しました。また、洋本文献についても、この間にお客様からご割愛いただいた新たな本を、時間ぎりぎりまで入力した結果、このような目録となりました。
すべての商品を従来の半額以下に価格設定し、洋本の数多くあるものはさらに下げました。また、写真版の新集品も、洋本の新規入力本も、付け値価格を意識的に落としてお求めやすい値付けに心がけました。皆様へお届けする「西日本文献目録」も今号で最後と思います。お心に留まるものがございましたらお気軽にご注文頂ければ幸いです。
思い起こせば、中学を卒業した翌年より、小倉魚町銀天街の「教養堂書房」に十二年間勤めさせて頂き、昭和四十七年六月、福岡市六本松の九州大学教養部裏で三坪の葦書房を開店しました。五年後に草香江に移転、同じ五十二年に「弘文荘」故反町茂雄氏の「文庫の会」に入会させて頂き、本格的に古書の世界へ。反町氏からは、目録発行のイロハをはじめ、お亡くなりになる平成三年九月までさまざまな薫陶を受けました。自身では、五十三年頃より池畑裕樹氏の「古文書勉強会」に入会、穴山健氏の大隈言道研究「ささのや会」では和歌の勉強を、昨年より海老田輝巳先生主宰の「漢文の会」で亀井昭陽の「空石日記」を習っています。いずれの会も継続中で、今後も末席で頑張るつもりです。
末筆ながら、皆様のご健勝とご多幸を祈念し、葦書房閉店のお知らせといたします。
平成二十五年十月
有限会社葦書房 代表取締役 宮 徹男
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→花乱社HP