■週替わりの夕暮れ[2013.12.29] |
![■週替わりの夕暮れ[2013.12.29]_d0190217_21393721.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201312/30/17/d0190217_21393721.jpg)
雲
山の上には雲が流れてゐた
あの山の上で、お弁当を食つたこともある……
女の子なぞといふものは
由来桜の花弁(はなびら)のやうに、
欣(よろこ)んで散りゆくものだ
近い過去も遠いい過去もおんなじこつた
近い過去はあんまりまざまざ顕現するし
遠いい過去はあんまりもう手が届かない
山の上に寝て、空をみるのも
此処にゐて、あの山をみるのも
所詮は同じ、動くな動くな
ああ、枯草を背に敷いて
やんわりぬくもつてゐることは
空の青が、少し冷たくみえることは
煙草を喫ふなぞといふことは
世界的幸福である
![■週替わりの夕暮れ[2013.12.29]_d0190217_21431927.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201312/30/17/d0190217_21431927.jpg)
湖 上
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂(したた)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞こえませう、
──あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。
月は聴き耳立てるでせう、
すこしは降りても来るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。
あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聴くでせう、
──けれど漕ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。