■6月7日、最後の竜一忌 |
松下竜一(1937〜2004年)さんの盟友であり「草の根の会」の代表・梶原得三郎さんは、近年毎回、「何故か、参加者が一向に減る気配がない。本当は、もう止めたいのだが……」と言われてきたが、とうとう決断されたようだ。
やはり惜しいし勿体ない気持ちもあるが、難しいのは「終わらせ方」だとすれば、自らが事に当たれるうちにということだろうし、梶原さんらしい潔い処し方だと思う。そして、そっと置かれたバトンを、そのつど別の誰かが手にしてまた走り出す、というのが──少なくとも松下竜一が気負うことなく志した──市井の人々による手弁当的な組織や運動の真っ当な在り方だろう。伝わるべきものはそうして生き残っていく。
「10年間、原発を含め、政治や世の中が途方もない方向へ行きそうな中、松下さんだったらどういう言葉を発するか、考えながらやってきた。今後も多くの人がその思想に接してほしい」と梶原さん。そして、「第10回竜一忌のご案内」の挨拶文では、最後に「事故から3年、なお収束の目途すら立たぬ東京電力福島第一原発の現状と置き去りにされる被災者の日々を思うとき、松下さんが目指した方向こそ究極の選択となるような気がしてなりません」と(5月7日の「朝日新聞」夕刊)。
なお小社では、松下さんの出発点となる新聞記事「暗闇の思想」(1972年→「木内みどりさんが松下竜一講演録『暗闇に耐える思想』を紹介」に全文掲載)を巻頭に収めた講演録『暗闇に耐える思想』(花乱社選書1)を刊行している。記録文学者としての松下さんがどのようなことを考えたのか、その全体像を知る場合に最適の書だと思う。
[5/15最終]
→花乱社HP