■気宇が問われる表札 |
この本は、光畑浩治さんのエッセイに、その文中から選び出した棚田さん揮毫の一文字をそれぞれ添えたもので、中に「新しい表札」という一文がある。光畑さんが、お知り合いから譲り受けたオガタマノキを使い、書を棚田さんに依頼して新しい表札を作られた。本書刊行後、花乱社の二人の分も頼んであげようということで、私とスタッフの分まで棚田さんに書いていただいたという次第。
現物を見て、その立派さに驚いた。236×87×45ミリ、500グラム。勿論、サイズのことだけではない。近年、行橋(福岡県)地域特産となっているカズラ筆を使用。側面には「二〇一四年初夏 看山散人書」と。

オガタマノキは、日本に自生するモクレン科では唯一の常緑樹という。2年程寝かせたとのことで、表面の縦目に削られた木目の一部には、細長い楕円形をした縁取りの黒い筋が浮き出ている。妙な譬えだが、まるで小さな霊が飛び交っているようだ。
初対面から、ただ見蕩れてしまっている。掲げる者の気宇が問われそうだ。
さて、私の家はこの表札に見合うほどのものだったか……。実は、現状我が家では、ポールで立った郵便受の前面アクリル板にしか名前を示していない(ここでこう書くのもなんだが、あまり目立ちたくない性分なので)。
とりあえず今、仕事机の上に鎮座してもらっているのだが。
[『田舎日記・一文一筆』156-157ページ。書は「筆」、筆はヒツジの毛]

[多分、まだ書き掛け]
→花乱社HP