■遅鳴きツクツクボウシの事情[週替わりの夕暮れ:14.10.5] |
少し風も強い。薄暗いモノトーンの世界に分け入る気分となり、路傍の花色に眼を向けたくなる。だが、写そうとしてもなかなか静止してくれない。
あちらこちらから色々な虫の音。自然の音色が一番楽しめる季節となってきた。
ふと、ツクツクボウシの声がする。ゆったりとした歌いっぷり。ひどい寝坊をしたのか、遅鳴きの一匹が蝉の季節の最終章を奏でている。
この夏、「朝日新聞」の「ひととき」欄で、70代女性だったか、たまたま屋外止水栓のボックス内で蝉の死骸を発見、すぐさまその事情を察した──という文章を読んだ。生まれ変わってまた蝉だったなら今度は違う場所から地上に……とかまで書いていたかどうか。小気味よいきっぱりとした語調に、非運の蝉に思いを致す側にも様々な事情や想いがあるだろうことを感じさせられた。
多少出遅れたって、命の限りに歌える樹上まで行き着ければ、それでいいではないか。そこで、やっぱり “遅咲き” の雌と出会えればいいが。
●昨4日の夕暮れ。事務所入居ビルから。
[付け加えるかも]
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