■きのふとあすとはなぜにおたがひがいたましいのか──週替わりの夕暮れ[2014.11.16] |

夕方ウォーキング途中にて。やっぱり空には雲があってこそ。


湖 水 丸山 豊
昼の螢は
おたがひに愛するとき
なぜに草むらでおそれてゐるのか
秋のみづうみの
ふかい胸のうちで死と生とが
なぜに臆病にふるへてゐるのか
京都の騎兵へたよりをしたため
もんしろ蝶のなきがらを分類する
たのしい音楽的な足どりにかはり
冷やかなまなざしが水の床をすべる
かまきりは
おたがひに愛したのち
なぜにすべてが苛酷であるのか
きらめくシャボンの泡につつまれ
きのふとあすとは
なぜにおたがひがいたましいのか
丸山(1915〜 89年)23歳の詩集『白鳥』より。この切迫感。とりわけ謎めいている三連は、1938年という時期を考えれば実はリアルな事態を歌ったものだろう。


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