■姜信子さんの(うんこをめぐる)「勝手に相聞歌」 |
恋人よ。
たうたう僕は
あなたのうんこになりました。
そして狭い糞壺のなかで
ほかのうんこといっしょに
蠅がうみつけた幼虫どもに
くすぐられてゐる。
あなたにのこりなく消化され、
あなたの滓になって
あなたからおし出されたことに
つゆほどの怨みもありません。
うきながら、しづみながら
あなたをみあげてよびかけても
恋人よ。あなたは、もはや
うんことなった僕に気づくよしなく
ぎい、ばたんと出ていってしまった。
金子光晴にこんな詩があったのか。流浪する作家・姜信子さんのブログで知った。
姜さんはこれに、自作の相聞詩を添えている。愉快で、そして「男」への愛おしさに溢れた──かつ失った相手への勝鬨(?)のごとき──返詩だ。
輪廻転生 姜信子
そうだよ、あんたはあたしが後生大事におなかにかかえて生きてきた、黄金色のうんこだったのさ。
くさいくさい、あんたのせいで、吹き出物が出るわ、胸は痛くなるわ、なのに、どうしてもひりだせない、大事な大事なうんこだったのさ。
遠い昔のはじまりのとき、あんたはおバカさんのあたしを喰ったつもり、してやったりだったんだろう。
おあいにくさま。
(……)
詩の続きは「勝手に相聞歌 その1 金子光晴と」(「読む書く歌う旅をする」by姜信子)で。
さて、男と女の呑み込み合い、どちらが剛腹(太っ腹)だろうか。
*姜信子さんについての記事→デイサービス施設での浪曲ライヴと姜信子にとっての「故郷」(姜さんの顔写真あり)