古書の葦書房、最後の店舗営業日。この数日は大賑わいだったようだ。「20年振りに来ました」と言う人、長崎からやって来てキリシタン関係の文献を70万円分買って帰った客もいたらしい。
葦書房に赴く前、事務所ビル(福岡市中央区舞鶴)から見た空(これが昨日だったら良かった)。

思い出話を一つ。
三十数年前、私が出版社の葦書房(古書店と出版社の「葦書房」の区別については→
古書の葦書房、来年末で閉店)に入り立ての時のこと(当時のことは「
久本三多氏のオルト邸、それに長崎チャンポン」で少し書いた)。私が取った電話は宮徹男氏からだった。社長(久本三多氏)に取り次ごうとしたが、席を外していて近くに見当たらない。その間、せいぜい1分程だったと思う。再度受話器を取ると、電話は切れていた。
こちらから掛け直した時の宮さんの言葉──「おまえんところの電話番をワシにさせるな」。何度かその話をして宮さんに苦笑いをさせたエピソードだが、若い人間に向かってそんなふうに言い切れる大人が、世の中には必要だ。

宮さんが中学卒業後、12年間「修行」をした小倉魚町銀天街の「教養堂書房」を思い出させる店舗内。所構わず手書きの札が掛けられていた。新刊書店と同様に(参考→「
今、書店が直面する困難──『金文会百年史』のこと」)、こうした店舗を持つ古書店が次々と消え去っていく時代が来るとは。

私が購入したのは、『伊藤野枝全集』(上下で500円!)、星加輝光『「北九州の文学」私記──火野葦平とその周辺』、そして佐木隆三『伊藤博文と安重根』。たまたまその時見掛けたものだし、すべて読み終えるかどうか分からないが、叩き上げの(まっしぐらな)人・葦書房宮徹男氏にも繋がるだろう、この九州に何らかの火床を有する「反骨」の系譜──図らずも忘れられない選書となりそうだ。

[12/30最終]
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