■『小山正孝全詩集』を頂いた |
初めて目にする詩人、そして出版社。薄手の紙を使用した外箱に、グラシンを巻いたフランス製本の2冊入り。なかなか瀟洒な造りだ。白を基調とした造本の世界に、いかにも清潔そうな詩が並んでいる。こういう頂き物はとても嬉しい。

ウィキペディアより。
小山正孝(おやま まさたか、1916年6月29日─ 2002年1月13日)は日本の詩人。中国文学者。「四季」、「山の樹」、「文学館」同人。関東短期大学教授。丸山薫賞受賞。
盆景家小山潭水の次男として、東京青山に生まれる。府立四中を経て、弘前高等学校(旧制)に進み、本格的に文学を志す。
旧制弘前高等学校時代に、杉浦明平の紹介で立原道造と知り合い、強い影響を受け、詩作を始める。したがって、初期には岩野泡鳴から立原へと発展したソネット形式を多用した、独自の世界を描いた抒情詩を多く作った。が、後には、散文的要素が強い哲学的、幻想的な世界を構築したり、日常に潜む危機を描いていった。また、初期から晩年まで、その詩の中心的課題は、「愛」であった。
作風が現代詩壇から孤立し、他に類を見ないものであったために、現代詩の傍流と見られることも多かったが、実は、日本の抒情詩の本流である詩人ではなかったかとの、再評価の機運が高まっている。また、幾篇かの佳品を残すにとどまったが、小説についても、強い関心と興味を持っていたことが、死後纏められた作品集によって判明した。
立原道造に強い影響を受けた、詩の中心的課題は「愛」──というところで腑に落ちるものがある。
とりあえず、私にも親しい世界に触れた一篇を掲げてみよう。
枝
幹は日があたためてゐる
根は土が抱いてゐる
枝よ
しなつてみたり
ぴんと空をつきさしたり
からんで網の目をつくつたり
冬中好きにさしてやらう
雨はお前をしやぶつて流れるかもしれない
雪はお前の上でひとやすみするかもしれない
風が来たら切つてやれ
音楽をかなでてもけつこうだ
枝よ
お前はやがて芽ぶくのだ
春になつたら
白い雲をひつかけたりして 物語そのままに
やさしい恋人たちをかばつておやり
→花乱社HP