■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7] |
下川本は、資料や調査を踏まえた旅のガイドを意識しつつも、失敗談を含めた個人的な体験や考察(例えば「ヴェトナム戦争」について)にも及んでいて、充実している。一方沢木本は、ガイド書として参考にすると言うより、どこまでも自分の旅及びそこでの思索を綴った、文学的とも言える旅行エッセイだ。並行して読むと、沢木耕太郎の文章の気障なところ──嫌いではないけど──がよく分かる。
ところで、私はハノイ旅行記( →“東洋のパリ” はスクーター・サーキットだった──2〜6日・ハノイの旅)の中で、
多分、ベトナム国内の他の地域も同じだろうが、ハノイの見物として筆頭に上げなければならないのが、街を走り回るスクーターの圧倒的な数。乾期ということもあったかも知れないが、市民の一番の足のようだ。
まず道路を含む景観を撮ろうとして、スクーターが写らないようにするのが難しい。大きな信号の場合、車の前に何重にもスクーターが停まり、青信号でそれらが一斉にスタート、その後に車が続くという流れ。信号無視も多く、おまけに右側通行のここでは信号は常時右折OKで、歩行者が渡ろうとしてもお構いなくどんどんスクーターが回り込んで来て擦り抜ける。街なかに信号自体が少ないし、路地も然りで、至る所縦横無尽で、どんな道でも横断には注意と度胸が要る。
スクーター天国の如きベトナム。旅行者には分からない規制も多いだろうこの社会主義国において、その自由奔放・勝手気儘──勿論、当事者たちにはそれなりの走行ルールがあるだろうが──な走りっぷりには、社会的なガス抜き装置のような、或いは反抗の土壌のようなものを感じてしまった。
と書いたが、沢木耕太郎もやはり、ホーチミンのオトーバイについて触れている(同書は2003年に刊行)。
ホーチミンは表面的にはかなり無秩序に見える。その象徴的なものがオートバイだ。凄まじいばかりの数のオートバイがあらゆるところを走りまわっている。それは道路ばかりでなく、人の密集する市場の中にも及んでいる。どれほど買物客がいようと構うものではないという勢いで乗り入れてくるのだ。
(略)最初のうちは通りを渡るのもおっかなびっくりだった。大通りでも、横断歩道に信号がなく、あってもバイクは無視して突っ込んでくるので、どのタイミングで渡っていいかわからないのだ。バイクの流れが途切れるのを待って十分以上もまごまごしてしまったこともある。しかし、二、三日もすれば、ヴェトナム人と同じように、スイスイとまではいかなくても、そうビクビクしないで渡ることができるようになる。重要なのは、向こうが必ず避けてくれると信じ、同じペースで歩きつづけることだということがわかってくるのだ。危険なのは途中で止まってしまうことである。オートバイはこちらが歩いているという前提で避けようとするので、不意に止まってしまうと事故につながりかねないのだ。(略)
無秩序に見えるのは交通ルールだけではない。歩道は屋台と物売りとバイクの駐車場と化し、夜にはさらにそこに寝入る人たちが現れる。しかし、そこにもやはり無秩序の中の秩序があるらしく、たいしたトラブルもなく夜が明ける。
「オートバイはこちらが歩いているという前提で避けようとするので、不意に止まってしまうと事故につながりかねない」というのは、私もバイクに乗るのでよく分かる(車の場合でも、怯えた猫がよく道の真ん中で固まることがある)。バイクもあくまで人が操縦しているのだ。「誰かを轢きたい」と思ってバイクに乗っている人間は(普通は)居ないし、第一、人を撥ねるとバイクも転倒してただでは済まない。アクション映画でよくバイクに乗った悪漢が人を追い回すシーンが出てくるが、あれはバイクのことを知らない人間による偏見と誤解の産物。
相手を信じること、自分のペースで歩き続けること、そして無闇に途中で立ち止まらないこと──これはヴェトナムでの道の渡り方に限らない心得だ。
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数年振りに咲いた我が家の紫陽花。前回の剪定の仕方が悪かったか(花芽を摘んだ?)、それとも陽当たりからか、ということで昨年移植。はて、確かガクアジサイと思っていたが……これがそうか?
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_21593481.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_21593481.jpg)
ウォーキングに出掛けた西ノ堤池(福岡市城南区)で。
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_23404773.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_23404773.jpg)
たくさんの紫陽花が咲いているが、やっぱりウチのが可愛いかな。
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_220433.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_220433.jpg)
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_23401597.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_23401597.jpg)
ごく普通の、曇り日の夕暮れ。
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_2203628.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_2203628.jpg)
●6月3日
事務所ビル(福岡市中央区舞鶴)より。
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_21582559.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_21582559.jpg)
●6月5日(4日深夜)
久し振りに月を。コンパクトカメラなのでこの程度まで。
![■危険なのは途中で立ち止まること、そして週替わりの夕暮れ[6/7]_d0190217_2159617.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/07/17/d0190217_2159617.jpg)
[6/8最終]
→花乱社HP