■真夏の夕暮れ[8/13]、そして長沢延子『海──友よ私が死んだからとて』 |
どことなく秋の風情が漂い始めている。
大学時代、生協書店の棚でずっと見掛けていて、ようやく買った記憶がある。
何故か、60年安保世代だと思い込んでいたが、彼女は1932年生まれ。
私が生まれる3年以上前に17歳で自死したことを、初めて意識に上(のぼ)せる。
何故、そんなに死に急ぐ必要があったのか──。
40年もの間、たまたますぐ見える所に置いていたこの詩集を、私は読んだことがあるのか──。
ランダムに開いたページの一篇。
乳 房
白い乳房のひそやかにうずく
初夏(はつなつ)の胸寒い夜
幼ない指で若さをかぞえてみる
ああ遠い荒原に足音がきこえ
もたらされるものは
甘いやさしい夢ではない
私はシャツの暖かみから
乳房を離して
あらわな白い塊に
遠いひびきをしみこませるのだ
やがて風の訪れに
──私の乳房は
血に染んでたおれるだろう
それでもいい
暗い荒原の風をおもいながら
ゆれ動く乳房はかすかにうずき
今宵ものかげを離れようとする
これが16歳の作とは。
……