■くじゅう・大船山、御池の秋 2015 |
ここ1週間程の間で、昨年11月に書いた「駆け込みくじゅう紅葉登山」が記事ランキング(本欄左側)に復活、すぐさま上位に入って来た。どうしてだろう、と思案し探っているうちに、我知らず “くじゅうの紅葉” を焦がれる想いに火をつけてしまった。大船山にはおそらく20回は登っただろう。けれど、いつも一足遅れで、御池での決定的な紅葉には遭遇してこなかった。
九州自動車道では久方ぶりに朝日を見遣る。助手席で何度もシャッターを押す妻(による写真3枚を下に)を、私は羨んだ。確かに朝焼けも悪くない……だが、赤々としたものが掻き消えた後には、間違いなく明るい朝……その結末の如何にもの「正しさ」に、何故かもうひとつ胸が躍らない。



9時過ぎに吉部(大分県玖珠郡九重町)登山口を出発(地図では上部の赤丸)。坊がつるまで1時間30分。遮る物がない湿原に、変わりやすい山の天気を証立てるような小雨。急ぎ大船山登山口に向かう。そこから霧と小雨とで何も見えない段原(だんばる)を経て、急登上の大船山頂まで、ややペースが落ちて2時間。

山頂は霧で覆われ、強風。20人程も居ただろうか。願うことは同じで、皆一心に、100メートル程眼下、次々に湧き起こっては風に飛ばされ尾根をかすめる霧に白く覆われた御池を見つめている。

一瞬、霧が途切れると、歓声とシャッターの音。染まり具合も様々、可憐な錦秋に、ただ息を呑むしかない。世の中、桜花を筆頭に、頭に思い描いた時以上の美しい光景と出くわすことはほとんどないが、ただ此処だけは違う、と言っておこう。ただし、どのルートを選んでも、ここまで3時間半は登らなければならない。

名残惜しさを振り切って下山。下りがけで、ようやく段原辺りを見渡せた。見え隠れを繰り返す光景は、霧の悪戯か、それとも厚意か。

もう少し下って。この後、紅葉の中の小径を戻る。

大船山頂を振り返れば、まさに秋の彩り。

坊がつるでは、ススキの群落と広々とした空が見送ってくれる。

何でもないこうした状景が、山中では胸に染みる。

帰り道で出合うハリギリの樹。傍の立て看板に「坊ガヅル林木遺伝資源保存林」の中の一種だと。まるっこい葉と鯨の腹を見るような苔むした幹の様子が気に入った。
この吉部(暮雨の滝)ルートは標高差が少ないだけに長途となるが、森歩きの風情がとてもいい。

暮雨(くらぞめ)の滝。登山道を逸れて急坂を下った所にあるので、特に帰路では億劫だが、その清楚さに充分に報われる。
ここからまだ1時間程歩く。

森で拾って来た一葉。葉脈一本にも命の記憶が。

最初に書いた記事ランキングの話。どこかの誰かが、今この時季の、くじゅう山域の紅葉情報をネットに求めていることを、後で思った。私もそうだった。このルートは全行程6時間半、どうぞ気をつけて。
[10.17最終]