■観世音寺の紅葉──『観世音寺の歴史と文化財』刊行 |
3月→雨の観世音寺境内、週替わりの夕暮れ[3.8]
4月→観世音寺の参道傍に咲く花
ちょうどいい時季に来た。やや盛りは過ぎた感はあるが、私の好きな紅葉が出迎えてくれる。
境内には、アジア系らしき若いカップルの他、数人が居る程度。歩いて10分程の太宰府天満宮には、外国人旅行客も含めバスを連ねてたくさんの人が訪れているようだが、国宝の銅鐘他、5メートルを超える馬頭観世音菩薩立像を筆頭に十幾つもの仏像を安置(宝蔵内)している観世音寺にまで足を伸ばす観光客は、そんなに多くないと聞く。
田園風景の中、1300年の時を超えて、ただありにままにそこに在る、という風情の観世音寺。そぞろ歩きしながら訪れたい場所だ。

あのメタセコイアは、少しくすんだ翠色に。そのうち、赤茶色に退色して落葉するのだろう。この樹における半年を、私は垣間見させてもらった。

半年程かかって、『観世音寺の歴史と文化財──府大寺(ふたいじ)から観音信仰の寺へ』(発行:観世音寺、発売:花乱社)が出来上がった(写真:川上信也、装丁:design POOL)。同寺住職の著者・石田琳彰(高倉洋彰)氏は、福岡を代表する考古学者でもあり、本書にもその歴史知見と研究業績が存分に盛り込まれている。168ページとそれほどボリュームはないが、由緒来歴を誇るのが主要命題となりがちなこの類の中で、全く趣の異なる内容の濃い一冊となった。
