■ピンク色の空に我が身を遁す時──週替わりの夕暮れ[11/19-22] |
朝、起き抜けにカーテンを開けると、空半分が珍しい様子の雲に覆われている。得体の知れない知性の悪戯の跡のような、粗い幾何学模様。紛れもなく此処も──多分、間違った表現だろうが──宇宙の一角なのだ、と思った。
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●20日
この夜は、月一度の「ささのや会」だった。
福岡生まれの歌人・大隈言道(おおくま・ことみち)は、1863(文久3)年、上方にて生前唯一の刊本歌集『草径集』(現在、岩波文庫版及びささのや会版がある)を上梓。その5年後に没するまで無数の歌を残していて、ささのや会ではこの数年、その歌稿から「『草径集』後の大隈言道歌集」を、ほかならない福岡で編もうと選歌に取り組んでいる。
*参考→20周年を迎えた「大隈言道研究・ささのや会」
これまでみんなで下選びしてきた歌を集め、再度精選していくためメンバー内で順番に読み上げてきているのだが、当夜、言道にしては珍しく、繊細な叙景ではなく、細かい説明抜きの述懐が二首あることに気づいた。
一つは、
したかへはこゝろも人になりはてゝわか身われともなきそかなしき
で、漢字・濁点を増やしてみれば、「従へばこころも人になり果てて我が身我ともなきぞ哀しき」。
「(あまりにも)他人に従っていると、心も他人になり果ててしまい、自分の体や自分自身が無いことが哀しい」というところだろうか。他国(対米)追随の信念無き輩は、現今の社会でも巣くっている。
これは分かりやすい歌だが、もう一首。
さはかりは身をいためしとゝりとめて 我からにかす心なりけり
「さばかりは身を傷めじととりとめて 我から遁す心なりけり」
さて、この歌の意味をどう受け取ればいいのか。
とりあえず私なりに解けば、「それほどまでとなれば我が身を傷めてしまうことになる、と思い留まり、自分自身を(そこから)遁す心持ちであることよ」か。
この場面で言道はきっと、現実生活上の具体的な難問に直面していたことだろう。それを、事情や背景は語らず(その字数はない)、心情のみを歌に書き留めた。歌としての出来はともかく、不思議な作品となった。
人には、身を剥がすように何かから己を遁す場合もあるだろうか。
事務所入居ビルから眺める夕暮れ空。湯煙か紫煙のような、誰かの溜め息のような、雲が……。
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●23日
夕方5時前、ウォーキングに出発。すぐにも雨をもたらすふうではなかったが、頑固そうに空を覆っている雲。だから、ほとんど期待はしていなかった。
西ノ堤池では、先週気にした虫の音が、まだ聴こえてくる。ピロピロピロ、ピィーロピィーロピィーロ(鈴虫に似ている)、ジーーー、の3種か。まずどれか特定の虫の音に集中していると、自ずとそれとは別種の音に気づく。各々の名は知らずとも、結構聞き分けられるものだ。
![■ピンク色の空に我が身を遁す時──週替わりの夕暮れ[11/19-22]_d0190217_2294525.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201511/22/17/d0190217_2294525.jpg)
そうこうしているうちに、雲の層が薄くなったのか、西空が段々と染まってきた。
久しぶりに意識したが、入り日が随分と南に振れてきた。その周囲を細い雲が同心円状に取り巻いている。
![■ピンク色の空に我が身を遁す時──週替わりの夕暮れ[11/19-22]_d0190217_22101173.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201511/22/17/d0190217_22101173.jpg)
期待は良い意味で外れた。私の好きなピンク色の雲が次第にその濃度を増していき、いつの間にか晴れた空の碧さと絶妙のコントラストを描く。
ちなみに私が携行する Canon IXY220F は、想像以上に明るく撮れる(時としてやや不自然)ことは措いても、赤やピンク色が微妙にオレンジ系に振れる(4色分解式に言えば、イエロー味が強まる)。ここでも、現実の雲はもう少し鮮やかなピンク色だった。
![■ピンク色の空に我が身を遁す時──週替わりの夕暮れ[11/19-22]_d0190217_2210251.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201511/22/17/d0190217_2210251.jpg)
[11/25最終]