■映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ[12/6] |
今、沖縄・辺野古で何が起こっているのか──。関心を持っているのならば、現地に行ってみるのが一番だろう。たとえ遅ればせでも……というのは、半分はたまたまだけれど、あの「安保戦争法案」が自民党により強行採決された日の翌9月20日に、国会議事堂前に出掛けた時に改めて感じたこと(→東京には空が無い…か、そして「戦争法案」強行採決翌日の国会議事堂前)。それが叶わなければ、せめて良質なドキュメンタリーを観るしかない。
三上智恵氏は、「毎日放送アナウンサーを経て、琉球朝日放送が開局した1995年に沖縄に移住し、同局で番組制作に携わった。初監督作『標的の村〜国に訴えられた沖縄・高江の住民たち』は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、キネマ旬報ベスト・テン文化部門映画部門1位などに選ばれた」(「朝日新聞」11月28日)と。
内容は、2014年夏から、11月の県知事選を経て、2015年1月までの辺野古での実録。今、あれこれ書いている余裕はないし、また私ごときが書く必要もないだろうから、簡単な感想のみに留めたい。
日本にある米軍基地・専用施設の74%が密集する沖縄にて、今、辺野古の海を埋め立てて最新の米軍基地が作られようとしているが、巨大な軍港を備え、オスプレイ100機が配備されるそれは、最早普天間基地の代替施設などではない──ということで、文字通り命を賭した闘いを続けている現地の人たちを捉えた作品。
主たる登場実物は十数人。いずれもその暮らしぶりと人間性までが映し出されていて、実際に会いに行きたいと思わせられた。特に、文子おばあ(島袋文子さん)がいい。沖縄戦を辛うじて生き延びた文子おばあは、「生きていていいことは何もなかった」、そして「壕の中に手榴弾投げられても、火炎放射器で焼かれても、私は頑張ったんだからさ。簡単には死なないでまだ生きてるさ」と言う。過去を語る時は厳しいが、笑うととても優しい顔になる。沖縄の現代史はこういう85歳を生み出した。
それに、米海兵隊基地のゲート前で、いつも拡声器を持って反対運動の先頭に立つヒロジさん。彼のリーダーシップには学ぶところが多い(どうも私と同年のようだ)。身を投げ出してミキサー車を止めようとするうちに逮捕者が出る。ヒロジさんは仲間を集めて言う。「明日取り返しに行こう。夜が明けたら名護署を包囲しよう」。そして改めて運動の信念を語る。誰かが捕まりそうになったら、まず最優先で助けること。過失があれば詫びること。捕まった者の自己責任にしてはならない。大衆運動は仲間同士で助け合わなければ成り立たない、と(以上、パンフレットより)。
タイトルの『戦場ぬ止み』は、「今年(くとうし)しむ月(ぢち)や 戦場(いくさば)ぬ止(とうどう)み 沖縄(うちなー)ぬ思(うむ)い 世界(しけ)に語(かた)ら」(今年11月の県知事選挙は、私たちのこの闘いに終止符を打つ時だ。その決意を日本中に、世界中に語ろうじゃないか)という、辺野古のゲート前フェンスに掲げられた琉歌の一節に由来する、と。
パンフレットにある森達也(作家/映画監督)のコメントを引いておこう。
ただの対立構造を知るだけならテレビのニュースで事足りる。
でもそこには感情がない。矛盾も葛藤もない。
それを知りたければ本作を観てほしい。
人々は揺れる。悩む。悲しくて笑う。怒りで泣く。
それが人間だ。
![■映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ[12/6]_d0190217_22364274.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201512/06/17/d0190217_22364274.jpg)
![■映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ[12/6]_d0190217_22365886.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201512/06/17/d0190217_22365886.jpg)
【追記】12月5日、ヒロジさん(沖縄平和運動センター議長・山城博治氏)は、米軍への提供地を示す黄色の線を踏み越えて基地敷地に侵入したとの容疑で逮捕された。「黄色の線を踏み越えて」というのがどういう情況なのか──この映画で垣間見たように思う。
また、12月8日付「朝日新聞」の「わたしの紙面批評」で、文藝評論家斎藤美奈子氏はこう書いている。
この一件〔米軍普天間飛行場の辺野古沿岸部移設問題〕は①米軍基地問題(安全保障問題)と、②民主主義的な手続きの問題と、③環境保全問題が複雑にからみ合っている(略)。
琉球新報11月21日の社説はパリ同時テロ後の首相の発言を引きながら〈「フランスと共にある」が、「沖縄とは共にない」のが今の日本政府、安倍晋三首相である〉と皮肉った。中央の報道機関も私たち読者も重く受け取るべき言葉だろうと思う。
なお、③の観点については、辺野古地区を含む大浦湾一帯は5300種以上の生物(260種余の絶滅危惧種を含む)が生息する世界的に見ても貴重な海であり、基地建設反対運動もそこに端を発している、と。
映画の中でヒロジさんはもっと激しい発言をしている。2014年8月14日の明け方、工事海域の囲い込みが始められ、それに反対しようと4隻の船と20艇のカヌーを出した際、防衛局と海上保安庁は大小合わせて80隻以上の船で包囲した。25ミリ機関砲を備えた艦船まで配備した国に対して、彼は語る。
植民地琉球なんだということを嫌でも認識せざるを得ない状況になっている。……そうなったらこの運動は止まないですよ。凄まじい戦いになりますよ。
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今日も歩いた。
本当に、流石にもう……と思っていたが、西ノ堤池ではまだ虫が、少なくとも6〜7匹鳴いていた。先週のようには散らばってなく池周囲の一角ではあったが、却って意気軒昂そうで、決して「虫の息」どころではなかった。
![■映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ[12/6]_d0190217_2237223.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201512/06/17/d0190217_2237223.jpg)
これは11月1日の夕暮れ。福岡市中央区舞鶴にて。
![■映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ[12/6]_d0190217_22383893.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201512/06/17/d0190217_22383893.jpg)
[12/9最終]