■戦国史を歩く──『北九州・京築・田川の城』 |
中村修身著『北九州・京築・田川の城──戦国史を歩く』(A5判・176ページ・並製本・本体価格1800円)。北九州市と京築(けいちく。京都郡+築上郡)と田川市・郡と言うとややこしいが、おおよそ旧豊前国(+筑前国の一部)の範囲と考えてもらえればいい。
言うまでもなくこの地域は九州の入り口であり、古来、戦が絶えなかった。城を案内することで、この地域の戦国史のアウトラインを掴んでもらおうという、やや変わり種のガイドブックだ。
参考→『北九州・京築・田川の城』表紙写真撮影行

取り上げた城はおよそ40カ所。
目次を示しておこう。築城年代の古い順で、[ ]内はその城のキャッチフレーズ。
園田城と園田浦城 [北九州で一番古い城か]
多良倉城と鷹見岳城 [武家方の城]
猿喰城 [九州最北端、宮方の城]
帆柱城 [筑前麻生氏の家城]
花尾城 [戦国大名の北部九州支配の軍事的要]
高塔山城と浜田城 [「麻生なにがし兄弟」の館と城]
門司城 [毛利元就、九州進攻の橋頭堡]
長野城 [日本一の畝状竪堀群]
三岳城砦群 [毛利氏の「長野退治」]
戸畑城(小田村備前守宅所) [在地領主小田村氏の去就]
上津役要害(竹尾城) [分裂する麻生氏]
鷲岳城(横代城) [大友氏の規矩郡支配の城]
豊前・小倉城 [豊前国の中枢へ]
宮山城 [秀吉軍、高橋元種軍と激突]
浅川城 [秀吉軍に攻撃された城]
中島城(若松城) [黒田藩の海軍基地]
黒崎城 [黒田藩の六端城の一城]
馬ケ岳城 [中世豊前国を象徴する城]
松山城 [毛利氏の巨大な向城]
笠木城 [境目の城]
大坂城 [京都郡代杉氏の築城]
障子ケ岳城 [大内氏支配の城]
香春岳城 [戦国期筑豊地方の要の城]
雁股城 [国人衆・野仲氏の城]
伊田原陣 [関白秀吉、岩石城攻めを視察]
岩石城 [細川藩の端城]
神楽城 [宇都宮氏の本拠]
本庄城 [黒田勢と城井氏決戦の城]
緒方館(緒方城) [在地領主の館]
内蔵寺城 [円形規格の里城]
香春城(鬼ケ城) [細川藩の端城]
東蓮寺城(東蓮寺陣屋) [元和元年以降の城]
岡 城 [重臣の処遇]

巻頭に「城めぐり」という導入の章を置き、城関係の各施設の名称やそもそもの「城」の定義、探訪に際しての注意事項などをまとめてもらった。
中村さんの文章は幾らか個性的だ。その50年というキャリアを感じさせる文章から一部を紹介しよう。
歴史好きの私には、日本各地に所在している歴史遺産の探訪は楽しいものである。特に、土塁、石垣、堀切、畝状竪堀群などの遺構が残っている、城ないし館に行き着いた時の感激は大きい。標高差300〜400メートルの登山も一向に苦にならない。
いろいろな人の教えを得、手探りで城・館(やかた)探訪を重ねるにつれ、その実態が分かるようになり、いつの間にか、歴史解明の資料の一つに城・館を加えることになっていた。
縄張り図作りや資料探しのため何度も現地を訪れた。時間を要したが、確実に資料も集まってきた。これもまた楽しいものである。
最近では、縄張り図や諸資料をもとに歴史と城・館を多くの人に伝えたい、との思いが強くなってきた。かといって、これまで探訪してきた城や館をすべて紹介するというわけにもいかないので、戦国時代の社会を凝縮させており、周防国の大内氏や豊後国の大友氏などが守護職を務めた豊前国や筑前国を中心に、国人衆や小在地領主たちが守護大名や戦国大名にどのように対処したかに焦点を当てることとした。
全体を読んでいただくと、北九州および京築・田川地域の城と戦国時代をお分かりいただけることと思う。
[8/24最終]
→花乱社HP