■「植民地」とは何か、そして週替わりの夕暮れ［4/9］

　日本はアジアにおいて歴史上最初の、そしておそらく唯一で最後の植民地を領有する国家となりました。この場合の「植民地」とは、特定の国家主権に服属しながらも、本国とは差別され、本国に行われている憲法その他の法律が行われていない領土のことです。（略）
　要するに、本国における「法の支配」から疎外された領土を含む国家が、「植民地帝国」なのです。そのような意味の「植民地」に対して、「法の支配」から解放された本国による制約なき政治的経済的軍事的支配が及んだことはいうまでもありません。

　以上は、４月28日に行われるライオンとペリカンの会の読書会のテキスト、三谷太一郎『日本の近代とは何であったか──問題史的考察』（岩波新書）の「第三章　日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」の冒頭部分。このテキストは、久し振りにレポーターをする私が選んだもの。
　「政党政治を生み出し、資本主義を構築し、植民地帝国を出現させ、天皇制を精神的枠組みとした日本の近代。（略）これら四つの成り立ちについて解き明かしていく」（本書宣伝文から）という作業は、改めて「日本の近代」を問う場合に必須だろう。
　──「植民地」とは、特定の国家主権に服属しながらも、本国とは差別され、本国に行われている憲法その他の法律が行われていない領土のことです。
　本文でこの件（くだり）を読んだ私が、すぐさま沖縄のことを思ってしまったのは、おかしいだろうか？　何より（総称するが）沖縄県人に対して、不当だろうか？

　４月５日付の「朝日新聞」で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対して抗議活動中に逮捕・起訴され、約５カ月間勾留された山城博治氏（３月18日保釈）のインタビュー記事を読んだ。
　「機動隊が100人以上いて、座ればごぼう抜き。悲鳴が上がるし、見ておれんかった。やむを得ずブロックを積んだ。『威力』というが、抗議する人が次々に救急搬送されるような状況をつくっているのは、あなた方じゃないか。権力のせいじゃないか」
　「そもそも、正義とは何でしょう。基地を造ってほしくないと体を張ることは駄目なのか。批判的な空気が本土に広がっているというのなら、本土と私たちとどっちがまひしているんでしょうね」
　参考→映画『戦場ぬ止み』、そして週替わりの夕暮れ［12/6］

　現実に沖縄に関して何らのコミットメントもしていない私は、単なる「本土＝外部の人間」であり、「抑圧者の片割れ」かも知れないが、「特定の国家主権に服属しながらも、本国とは差別され、本国に行われている憲法その他の法律が行われていない領土」というのが植民地ならば、真に悲しいことながら、私は未だ沖縄はその「植民地」定義からそれほど遠くないと感じてしまう。
　そして、現在何より怖いのは、そうした日本国内における地域間の差別構造や「当事者」意識を云々している間にも、そもそも自分や内輪の利権と対米追従にしか関心がなく「法（とりわけ憲法）の支配」なんぞ眼中にない連中が、まさにやりたい放題、特定秘密保護法（2013年）、安保法制（＝戦争法、2015年）、自衛隊内「背広組優位」規定を撤廃（改正防衛省設置法、2015年）などに引き続き、どさくさ紛れの「テロ対策」に託（かこ）つけた今更な「戦前回帰」政策──「共謀罪」法制化、「教育勅語」称揚→ゆくゆく強制……──を次々に打ち出し着々と実現させようとしていることだ。
　多少乱暴に言えば、今やこの国自体が、「戦後民主主義」の簒奪者により、「憲法その他の法律」が行われないどころか奪われていきつつある領土＝「植民地」化へとひた走っているのではないか。
　北朝鮮や中国の政情を笑っている時では、最早ない。
　［4/12最終］

　＊

　デイジーのこの花色、やっぱり無視できない。

　何やら不謹慎な物が浮いているような……。モクレン、この図体をどう撮ったらいいのか。


　私のウォーキング・フィールド、西ノ堤池の桜。
　幸いにと言うべきだろう、今年も満開に遭遇できた。