■不戦平和・反戦平和・非戦平和 |
どうやら当時、ブログには出さなかったか、出したけれど記事写真を載せたので後日削除したのか、ともかく現在見当たらないので、改めてここに。
*
新聞を見ない人或いは他紙を購読している人のためにも、昨日の「朝日新聞」天声人語はあえて掲示しておかなければならない。
シベリア抑留中に現地で果てた日本兵・軍属は約5万人。その名簿作りに、70歳を過ぎて独力で取り組んだ人がいた。
●【天声人語】2014年5月18日(日)
悲惨をきわめたシベリア抑留は、忘れてはならない昭和の歴史だ。60万人に近い日本兵や軍属らが、 酷寒の地での強制労働のためにソ連に捕らわれた。異土に果てた人は5万人を超える
▼死者は「数字」では表せない。誰が死んだのか。それを抜きにして数だけを言う非礼は、 犠牲者に対して許されようもない。自らも抑留者だった村山常雄さんが、 長年の思いを実行に移したのは70歳のときだ
▼ソ連側資料をカタカナにした名簿はあったが、誰とも分からぬ名が多かった。 村山さんは11年かけて膨大な資料を突き合わせ、864収容所、4万6300人の名簿を作っていった。 その全氏名を載せて自費で出した本の重さは2キロにもなった。うち7割は漢字で表した
▼大部の労作を、「紙の碑(いしぶみ)」として小欄で紹介したことがある。 「一人ひとりが存在したことを、石に刻むつもりで紙に刻みました」。 そう語っていた村山さんだったが、1週間前に88歳で他界された
▼戦中派からの伝言として、別の著書にこう書いている。 「単純に平和と言わないでください。言うのなら平和の前に必ず、不戦、反戦、非戦とつけてほしいのです。 私たちの世代は子供のときから『平和のための戦争』と教えられ、殺し殺されてしまった」
▼そして「日本は道義の先進国として世界に尊敬されてほしい」とも。 戦後69年となり、戦争を知らない為政者が「積極的平和主義」をうたう時代である。 冥福を祈りつつ、残された言葉の真実を忘れまいと思う。
「平和」と言うのならその前に必ず、不戦、反戦、非戦とつけてほしい──。
このところ、行財政改革(年金一元化や事業仕分けはどうなった?)や社会的格差や弱年層の貧困問題など、本来なすべき喫緊課題の多くを放擲・隠蔽して、国家機密や憲法ですら手前勝手に “解釈・規定” し、政府の一存でこの国を「普通に戦争ができる国」にしようと躍起になっている者たちの本性を見極める必要がある。もはや、東北大震災・原発事故のみならず、あの「国権の発動」以前の軍部暴走により “勃発” した盧溝橋事件に始まる日中・太平洋戦争をも、なかったことにしたいかのようだ。
ちなみに、小社刊の近藤健・佐藤誠著『肥後藩参百石 米良家(めらけ)──堀部弥兵衛の介錯人米良市右衛門とその族譜』(→400年に及ぶ歴史物語──『肥後藩参百石 米良家』)では、12代米良繁実の項において、記事に出てくる村山氏の調査資料やロシア側提供資料にもあたり、シベリア抑留となった繁実が(メイラ・シネミやマイラ・シネミとして)6カ月後に「栄養失調症及び肺炎」で死亡した経緯と埋葬地までを、大変な労力をはらいつぶさに追っている。
そもそも「名もなき兵士」はいないし「戦争による無縁仏」もないはずだが、この国は未だ、かつての「大東亜共栄圏」内で戦死した兵士、戦禍で亡くなった民間人の遺骨をあちこちに放置したままだ。兵士も国民も、使い捨て可能な “人的資源” ではない。 (2014年5月19日記)

●日本国憲法 前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
■