■私たちはこんなにも愛されていないというのに──捨ててしまえない(この国、ではなく)新聞投書 |
愛のない国の大人の責任とは 主婦 伊達智子(愛知県 59)
前沖縄県知事、翁長雄志氏の言葉通り、この国には「愛がない」。戦後復興の名のもとに推し進められた高度成長は、経済と産業の発展を最優先し、肝心なものを置き去りにしてしまった。失われたものは計り知れない。人間は成長どころか退化してしまったのかもしれない。
原発事故の後始末もままならず、自殺者は後をたたず、権力を握る者とそれにすり寄る者たちだけが肥え太り、弱者は切り捨てる。絵に描いたような失政ではないか。今も仮設住宅で暮らす人がいるのに、オリンピックや万博どころではない。戦後の復興は人々の幸福にほど遠く、いまだ道迷いのただ中である。
ハロウィーンや年越しのカウントダウンに集まるパワーが、なぜ辺野古に向かわない。取り返しのつかないことが強引に進められているのに。私たちはこんなにも愛されていないというのに。胸がつぶれる思いである。
「寄り添う」と言いながら、踏みにじる。聞くふりをするだけで、聞きながす。何をしでかしても謝らない。そんな国であってはならない。
愛のない国が行き着く未来がどんなものか深く考えなくてはいけない。大人の責任である。
戦後の復興は人々の幸福にほど遠く、いまだ道迷いのただ中である――六十数年生きてきて、私も痛切にそう思う。
父祖の世代の苦労や犠牲や悲劇は、何のためであったか。
森友学園問題の徹底審査を望む 無職 酒井伴美(神奈川県 85)
「森友学園問題 近畿財務局OBに聞く」(19日「朝日新聞」)を読んだ。会社員時代、用地買収に携わった者として私見を述べたい。
土地の鑑定価格は約10億円だったが、財務局は1億円強で売った。売買価格の基準になるのは近隣の地価公示価格や、実際の売買事例だ。道路を1本挟んだ同規模の土地が約14億円で売られた事例があるという。どう説明されても納得できない。
籠池泰典・前理事長が、安倍昭恵氏と現地で撮った写真を財務局に見せたことで主客が逆転したと指摘されている。大事な国有財産を立場の強くなった人に不当に安い価格で売却したうえに、それが非難されると、文書まで改ざんするという二重の過ちを犯してしまった。
改ざんという到底受け入れられない仕事を、罪悪感に苛(さいな)まれながらもせざるを得なかった職員の苦悩を思う。実名まで明かして取材に応じたOB4人の言葉に触れ、自殺した職員の死を決して無駄にしてはいけないと強く感じた。
財務省関係者ら38人の不起訴処分について、検察審査会で審査が本格化しているという。今後の的確な国有地管理のためにも、徹底的な審査を期待したい。
今後の的確な国有地管理のためにも、徹底的な審査を期待したい――その言葉が、どこまでも最後に取って付けたようで哀しい気がしてしまうのは何故か。