■「現在の両国政府の政治的葛藤は、人々の自由な往来と交流を阻害している」──「対馬宣言」全文 |
「朝鮮通信使」記録がユネスコの「世界の記憶」(世界記憶遺産)に登録されて2年。
登録を推進してきた日韓の関係者が、10月30日、通信使ゆかりの対馬に集まり、「対馬宣言」を発表した。
全文は一部メディアにしか出ていないので、ここに掲げておこう。
対馬宣言
わたしたちは自由で平和な国に住むことを願う。
そして、これらの国々を自由に往来し、多くの人々と交流することを望む。
そのためには国家間に葛藤があってはいけない。日本と韓国は善隣友好と葛藤を繰り返しながらも、人々は交流を積み重ね、今日に至っている。
日本と韓国は地理的に近い国である。両国の葛藤と反目を誰一人望んではいない。それにも関わらず、現在の両国政府の政治的葛藤は、人々の自由な往来と交流を阻害している。
ここで、わたしたちは両国の人々が「誠信交隣」の精神を取り戻すことを訴える。
16世紀末、豊臣秀吉が引き起こした文禄慶長の役により両国の関係は破綻したが、その回復し難い関係を正常化し、平和を構築した精神的志向性の根本こそが「誠信交隣」の精神であった。
朝鮮通信使が、平和構築のために日本と韓国を往来し交流を重ねた多様な遺産が2017年ユネスコ「世界の記憶」に登録され、世に知られるようになったのも、そこには「誠信交隣」の精神が満ち溢(あふ)れていたからだ。
このような時にこそ両国の人々が活発に往来し、「誠信交隣」の精神を実践することが重要である。その積み重ねが両国政府に誠信交隣の精神を促し、根強く残る両国間の政治的葛藤と反目を解消するものと信じている。
わたしたちはユネスコ「世界の記憶」登録2周年にあたり、朝鮮通信使が上陸した日本最初の地である対馬に集い、登録を推進した者として「誠信交隣」の精神を実践するために絶え間ない努力を注ぐことを宣言する。
●朝鮮通信使歴史館(釜山)のパンフレットより
