●5月6日
静かな連休の最終日、西空が少し染まっているのに気付いて、近所の公園へ。
何でもない一日の終わり、のようだが……。
![■「さわることは見ることか おとこよ。」──大岡信詩、そして週替わりの夕暮れ[5/6-10]_d0190217_17431887.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202005/10/17/d0190217_17431887.jpg)
●5月7日翌日はもう少し雲があった。事務所入居(5階)ビルより。![■「さわることは見ることか おとこよ。」──大岡信詩、そして週替わりの夕暮れ[5/6-10]_d0190217_17440180.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202005/10/17/d0190217_17440180.jpg)
●5月8日
ビルの照り返し。孤影。
![■「さわることは見ることか おとこよ。」──大岡信詩、そして週替わりの夕暮れ[5/6-10]_d0190217_17442420.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202005/10/17/d0190217_17442420.jpg)
●5月10日
ウォーキングは雨で中止。
近くのスーパーに白ワインを買いに行く道すがら。
![■「さわることは見ることか おとこよ。」──大岡信詩、そして週替わりの夕暮れ[5/6-10]_d0190217_18324842.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202005/10/17/d0190217_18324842.jpg)
さわる 大岡 信
さわる。
木目の汁にさわる。
女のはるかな曲線にさわる。
ビルディングの砂に住む乾きにさわる。
色情的な音楽ののどもとにさわる。
さわる。
さわることは見ることか おとこよ。
さわる。
咽喉の乾きにさわるレモンの汁。
デモンの咽喉にさわって動かぬ憂鬱な智恵
熱い女の厚い部分にさわる冷えた指。
花 このわめいている 花。
さわる。
さわることは知ることか おとこよ。
青年の初夏の夜の
星を破裂させる性欲。
窓辺に消えぬあの幻影
遠い浜の濡れた新聞 それを
やわらかく踏んで通るやわらかい足。
その足に眼のなかでさわる。
さわることは存在を認めることか。
名前にさわる。
名前ともののばからしい隙間にさわる。
さわることの不安にさわる。
さわることの不安からくる興奮にさわる。
興奮がけっして知覚のたしかさを
保証しない不安にさわる。
さわることはさわることの確かさをたしかめることか。
さわることでは保証されない
さわることの確かさはどこにあるのか。
さわることをおぼえたとき
いのちにめざめたことを知った。
めざめなんて自然にすぎぬと知ったとき
自然から落っこちたのだ。
さわる。
時のなかで現象はすべて虚構。
そのときさわる。すべてにさわる。
そのときさわることだけに確かさをさぐり
そのときさわるものは虚構。
さわることはさらに虚構。
どこへゆく。
さわることの不安にさわる。
不安が震えるとがった爪で
心臓をつかむ。
だがさわる。さわることからやり直す。
飛躍はない。
不思議な詩だ。