ここではまず、マスコミなど向けの本書案内文を掲げておこう。
榊氏とは、かつての葦書房時代──その時はまだ編集担当にはならなかったが──から40年を超えるお付き合いなので、ご本人の紹介も総纏め的な意識で書かせていただいた。
小社ではこの度、九州を代表する写真家・榊晃弘氏が10年をかけて捉えた九州・沖縄の巨樹の写真集を刊行致します。
榊氏は1970年代から、主として九州に所在する「装飾古墳」(原始美術)の撮影・紹介及び保護活動に先鞭をつけられた方で、以降、「眼鏡橋」、「薩摩の田の神さぁ」、南欧の「ローマ橋」を取り上げた写真集を発表される中で “石の写真家” として知られてきました。小社では2016年に『中国の古橋──悠久の時を超えて』を刊行しております。
その榊氏が、2011年3月の東日本大震災/福島原発事故をきっかけに、自然を見直してみなければならないと、九州・沖縄に現存する巨樹の撮影を開始、今回、撮影済み200カ所程の中から100カ所を選び出して一冊に纏め上げました。
本書の特色は、「巨樹」サイズの上位ランキングにとらわれることなく、樹種にも目配りしつつ、写真家独自の視点から捉えられた樹のそれぞれが、実に個性的で、生命力に溢れていることです。序文「巨樹に聴く」の倉本聰氏の文章にも「彼らの枝の曲がり具合。肌に刻まれた無数のしわ。繊維のねじれ具合。付着した苔、地位類。それらを見ていると彼らの生き抜いてきた時の重みが、否応なく僕らを圧倒する」とありますが、最初グロテスクにも見えた樹に対しても次第に “愛おしさ” が湧いてくること間違いなしです。
長崎の “被爆クスノキ” 他巨樹にご関心が深く、ご自身も巨樹の点描画を描かれている倉本氏から2000字近くの心のこもった原稿をいただきました。「巨樹たちの呟く囁きを、必死で聴こうと耳を傾ける」。北海道富良野で暮らす倉本氏による、九州の巨樹についての語り──。巨樹写真と併せて、この時期だからこそ多くの方に触れていただきたく思います。
以上、ご案内致し、ご高評をお願い申し上げる次第です。
2020年7月 花 乱 社
●熊本県