10月31日〜11月３日、北東北を旅してきた。元々は春先に台湾行の予約をしていたが、その後、現今も続く事態に立ち至り、ならば「Go To トラベル」を利用して秋田〜岩手〜青森の３県へ行ってみようと。これまでこの辺りは鉄道や空路で通過したことはあるが、降り立ったことはない。空港を出てからはレンタカー利用。まずは、今回、一本の樹の紅葉としては一番感銘を受けた盛岡城跡公園のサトウカエデ（と標識にあった）を前触れとして掲げておこう。樹はこのようにも燃え立つのだ。
●10月31日どこの上空だったか……。白日の地平線（と、そう言っていいのだろうか）もいいものだ。
乗り継ぎ地・東京の上空。
上部に富士山が見える。
冠雪の鳥海山（2236m）。
秋田空港で降り、レンタカーに乗ってまずは角館（かくのだて／秋田県仙北市）へ向かう。
武家屋敷通り。
このところ、どこへ行っても若者もみなマスク姿となった。
私にとっては藤沢周平世界を思わせる光景。
やっぱり赤は気持ちが上がる──というのが今風の言い方か。
どことなく福岡のと違う。
この赤もいい。武家屋敷通りから盛岡方面へ向かう。
この頃、４時半。
ホテル周辺を散策しようと思うのなら、４時頃には到着しておかないと駄目だ、ともうここで理解させられた。
宿は鶯宿（おうしゅく）温泉（岩手県岩手郡雫石町）のホテル。
「フラワー＆ガーデン」を謳っていて、この時季の夜はイルミネーションが。
ここでも赤が気になる。
夢見がちなような、SF世界のような。
●11月１日
まだ薄暗い中、目覚めてカーテンを開けて驚いた。目の前に奥羽山脈が。
2000m級も並んでいそうだ。
眼下も秋色に満ちて。
ホテルの庭からも眼が離せない。
実のところ私は、「東北で紅葉」というのはそれほど願望していなかった。
勿論この時季だからそれなりには期待していたけれど、このように「どこでも紅葉」とまでは想像していなかった。
やはり「紅葉こそは一番美しい “花”」と言っておこう。滅びと豪奢とが共存している。チーズを求めて小岩井農場（岩手郡）へ。
バターナッツかぼちゃとか。
盛岡市へ。
川の多い所だと思った。
街中から岩手山（2038m）が望める。
石川啄木新婚の家。1903（明治38）年に３週間程暮らしたらしい。
石川啄木 盛岡市生／1886-1912宮沢賢治 花巻市生／1896-1933中原中也 山口市生／1907-1937いつ頃からか、日本の詩人と言えばすぐにこの３人を思い浮かべるようになった。皆、20代後半から30代で没している。私の贔屓は勿論、中也だが。
宮沢賢治記念館のポスターか。
さわや書店。街のリアル書店には何とか生き抜いてほしいものだ。
岩手銀行赤レンガ館。規模が少し大きいけれどちょっとムードが似ているなと思ったら、やはり福岡市赤煉瓦文化館と同じく辰野金吾が設計に関わったようだ。そろそろ私は、盛岡からの出発時刻を気にしていて、大事な塔屋をアングルに入れてなかったようだ。
参考までに、これが福岡市赤煉瓦文化館。元々は日本生命保険（株）九州支店。昨今の文化財活用推進気運を受けて、地元出身文学者関係の展示をやめて、１階スペースは無料のIT関係などの起業支援施設になっている。要するに「文学では食えない」という話。
盛岡城跡公園（岩手公園）。
まさに都会のオアシス的風情だ。こうした場所が日常の中にあることの喜びを思うだけで、人間を経済的観点だけで測る愚が知れるのではないか。即ちトランプ氏は、在野に戻って金儲けに一層邁進すればいいだけのこと。
東北自動車道を北上して十和田湖へ。
この湖がこれほど大きいとは思っていなかった。
といっても、国内第13位だと。
この宿には昭和天皇も泊まったとか。
宿の旧玄関。
●11月２日
十和田湖畔を離れて青森市へ向かう。何処も落葉の道。
紅葉のピークは少し前だったようだが、十和田湖周辺がこれほど美しいとは想像していなかった。いや、ここから少し足を延ばせば奥入瀬（おいらせ）渓流。この日は雨天で、さらに通行止めとなっている部分もあるようなので私は迂回したが、紅葉好きなら見逃せない場所のようだ。ここまで見てきた北東北の紅葉で印象的だった点は、全体に樹が大きくて野性的なことだ。そのことを福岡県内の感覚で言ってしまえば、ほとんどどこでも「耶馬渓」。 参考→二日間の京都紅葉三昧［2016年11月］
この辺り、標高も多少あるはずだが、どこを走っても錦秋が気になって仕方がない。
青森市に入り、予め約束していた大学時代の同級生と会う。
30年振りくらいか。
私より２歳上で、長年手広くブティック経営をして来た彼、ずっと独身を貫くのかと思っていたら、15年程前になんと29歳年下の女性と結婚し、４歳と６歳の男児二人もできたとか。
まさに人生色々。
「青森市文化交流観光施設ねぶたの家ワ・ラッセ」にてねぶたの展示を観る。
ちなみに「ワ・ラッセ」とは、ねぶたの掛け声である「ラッセラー」と「笑い」から、また人の「和」、市民の「環」などから命名されたもの、と。
どこにでもシャレ好きの人間たちが居るようだ。
この夜は青森県三沢市の星野リゾートへ。ねぶたの青森らしいムードが演出されているが、要するに子供連れ向きのテーマパークか。
●11月３日
青森空港→伊丹空港→福岡空港。青森空港で夕暮れを待つ。
もう一度、東北を訪れることがあるだろうか。
