●2月9日事務所(5F)から。夜の帳はこのようにして降りるのだ。●2月10日
2週間程前、田川郡香春町の道の駅で枝垂れ紅梅の鉢を見掛け、素通りできずに購ってしまった。以前、白梅を地植えしていた時は、てんでに枝を伸ばして素人には剪定が難しく、最後は半分自棄(やけ)になって伐ってしまった。ともあれ私は、首尾のほどは措いて、「桜伐る馬鹿 梅伐らぬ馬鹿」の後半部に関しては深く頷ける。
ふっくらした蕾がほころびかけて……この木はこのタイミングがいいようだちょうど2年前の2月10日、加藤典洋さんは「雪」という詩を遺した。
死後編まれた詩集『僕の一〇〇〇と一つの夜』の本編最後の詩だ。
雪
気づいたら僕は死んでいた
まわりでは看護師さんたちが肩を寄せあい僕を落胆の思いで見下ろしている
死の知らせはすでに家族に届いている
妻よ安全運転を心がけよ
珍しい降雪スタッドレスを履いているとはいえこの時間富士見川越道路は渋滞の時刻おまけに昨夜から寒冷前線到来橋は凍っている
娘よしっかりとハハを守れ
そう気づいたら僕は死んで雪になってふっているのだった
(2019/2/10 『僕の一〇〇〇と一つの夜』より)
この詩を書いて3カ月程のち、加藤さんは5月16日に命を終えた。死んで雪となり愛する者に降り掛かる、その想い──。
●2月11日
日曜日(13日)の天気が期待できそうにないので、今日ウォーキングへ。天も地も区別のつかないような夕暮れが。
[書き掛け]