1月に龍秀美さんの『龍秀美詩集 TAIWAN』(中・日併記版)を出版した。
龍さんは、2000年に『詩集 TAIWAN』(詩学社)にて第50回H氏賞を受賞、その後20年の間、ルーツである台湾の人にも読んでもらいたいと中国語版出版を目指し、ここ数年はとりわけ傾注されてきた。
昨年春以降、世界を覆ったコロナ禍は、日台関係にも鎖国状態をもたらし、とりわけ昨年末からは奔走と言うしかないラストスパートだった。
中国語への翻訳は、台湾師範大学国文学科特聘教授の金培懿氏。
元々の発想は台湾向けの翻訳詩集であったが──H氏賞受賞詩集の中国語翻訳自体が珍しいのでは──、本書が異色かつ貴重なのは、金氏の企図で台湾の研究者らによる解説や龍さん自身の自作解説が加わった上に、日本語詩全篇収録は勿論、それ以外の原稿全ての日本語訳が併録されていること。
これで、中国語/日本語どちらの言語でも読めるだけでなく、原文がどう訳されているのかなど明瞭な対照ができることになった。
装丁は毛利一枝さん。
出版の相談を受けた時には既に龍さんが依頼済みであったが、かつての葦書房時代から40年以上の時を経て、毛利一枝さんと初めて仕事をさせていただいた。
経験豊富なことは言うまでもなく、その誠実で緻密なお仕事振り、出来上がった本の行く末にも心配りをされるお人柄には感服するしかなかった。
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龍秀美さんとは、前に在職していた会社で『一丸章全詩集』(龍秀美編、海鳥社、640ページ、2010年)出版のお手伝いをした。 編集・制作に7年かかったが、それがそこでの私の最後の仕事となった。→龍秀美さん、一丸章を語る[2011年9月16日]
→『一丸章全詩集』について[2011年2月2日] 今回、ほぼ10年振りに出版のお手伝いをさせていただいたわけだが、この10年は当然そのまま、花乱社創業からの10年でもある。
たかが10年、されど──私にとっては怒濤波瀾の10年。
ついては、龍秀美さんにこの度の詩集出版記念として、かつ花乱社創業10周年記念として、「今、詩にできること」というテーマで講演をしていただくことにした。
日程は今週13日、まだ定員30名には少し空きがあります。
お問い合わせ・ご予約は、花乱社 info@karansha.com へ。
●追記 3/10龍さん経由で、神保町・東京堂書店の店頭写真を見せていただいた。なんと、『文學界』と並べられている。