●2月6日福岡市ではおそらく今年一番の寒風が吹いていたのではないか。こういう季節のウォーキングこそが、実は一番心が躍る。体内エネルギーを燃焼させていることに否応無く自覚的になってしまう。![■お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな──中野重治詩、そして週替わりの夕暮れ[2/6]_d0190217_21375288.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/06/17/d0190217_21375288.jpg)
西ではなく東の空──夕暮れの火照りの色を探し求めている自分を思う。
![■お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな──中野重治詩、そして週替わりの夕暮れ[2/6]_d0190217_21380625.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/06/17/d0190217_21380625.jpg)
赤色を目にすると、やはり気分が上がる。
![■お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな──中野重治詩、そして週替わりの夕暮れ[2/6]_d0190217_21383096.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/06/17/d0190217_21383096.jpg)
歌
中野重治
お前は歌うな お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな 風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな すべてのひよわなもの すべてのうそうそとしたもの すべての物憂げなものを撥(はじ)き去れ すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ もっぱら正直のところを 腹の足しになるところを 胸先きを突き上げて来るぎりぎりのところを歌え たたかれることによって弾ねかえる歌を 恥辱(ちじょく)の底から勇気をくみ来る歌を それらの歌々を 咽喉(のど)をふくらまして厳しい韻律に歌い上げよ それらの歌を 行く行く人々の胸廓にたたきこめ
日没を挟んで2時間歩きながら、何故か今夜は中野重治を読もうと思った。辿り着いたのが、やはり「歌」。詩句を写すのも初めてではないかも知れない。逐一は覚えていないが、これまでこの詩に対するオマージュや論評をだいぶ読んできた。だがこの詩には、詩人を目指そうとする人間でなくとも、各々が──それも決定的に──遭遇するしかないだろう。当然時代性を帯びてはいるだろうが、この詩には「歌」の原点が語られている。この詩に出会うために、人は中野重治の詩を読もうとするのではないか。どこまでもセンチメンタリズム(自己愛)と現状肯定(隷従)とが罷り通るこの国で、行く行く人々の…ではなく自らの「胸廓」に怒りを叩き込むために。胸いっぱいの大きな呼吸をするために。
向かうべきは隘路や狭間かも知れないが光は見えている。