●2月21日ただの夕暮れが続いた先週───けれど、戦争が始められた。![■きくがよい 書記長の悪は告知された 文明はゆっくりと狂乱した───谷川雁詩、そしてただの夕暮れ[2/21・27]_d0190217_19195036.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/27/17/d0190217_19195036.jpg)
水車番の日記
谷川 雁
とりどりの哲学が廻らなくなってひさしい きつい露にぬれている南の小屋 魚の肌した木をみてくらす男 おれは 爪と髪でちいさな琴をつくろう
泉を汲んだ靴はもうかわいてほろびたが 粘度をなすりつけたいかさま師の空 むらさきの血いまもながれる熊襲の町で おれは力というものを知ったのだ
きくがよい 書記長の悪は告知された 文明はゆっくりと狂乱した
蔓やいぼや棘にかこまれ 沙漠のこちらでは繭になった政治局がある すべての首領の心を刺し 母をなぐさめ 社会主義が大きく年をとったのさ
おれはだまって月の光りをたべおわる 負の世界でとびまわるぶざまな鶏を よあけのつつましい旅籠へと追っていく
傘さえももたぬ苔くさい王は それから戸毎に熱い鍋をのぞいてあるく 朝顔しげる領地に鼻をひくつかせ なにやら沖縄のような青さをふんづけながら (『谷川雁詩集』思潮社、1968年)
信仰と貿易
石原吉郎
きみに信仰の体系があるように おれには 貿易の 体系がある たえず他界へ行きもどりする 生きるものと 死ぬものとの貿易だ おれの貿易に 船は来ない 朝までのわずかな眠りが その仲介だ きみの思考をはみだすものを きみは体系から 放逐するが おれの収支を つぐなわぬものは おれの貿易から 排除するだけだ それが 均衡の原則だ 風と雨 そして貨幣の音は おれの貿易にもつきまとう そしてさいごに きみは 信仰を 貿易と呼ばぬが おれは 貿易を 信仰と呼ぶ それが 貿易の 精神だからだ 信仰は 無償でありえぬからだ (『新選 石原吉郎詩集』思潮社、1979年)
●2月27日
空は晴天、冷え込みも緩んでウォーキングに好適の日だったが、急ぎのDTP仕事があって中止。楽しみは寸時忘れろ。未練がましく、いつものスタート地点である近所の公園まで夕暮れを垣間見に。![■きくがよい 書記長の悪は告知された 文明はゆっくりと狂乱した───谷川雁詩、そしてただの夕暮れ[2/21・27]_d0190217_19201409.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/27/17/d0190217_19201409.jpg)
まるで雲がないことに、少しだけ慰められる(夕焼け映えには雲が必要)。
そこはかとなく春の気配が。あの春が来る。