■死は自然風の如くに吹くものと軒の雀の申したまいき──歌人・加来光吉氏逝かれる |
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2022年 12月 14日
昨12月13日鶏鳴、行橋市在住の歌人・加来光吉氏が亡くなられた。84歳。 私が加来氏にお会いしたのは、最初は今年8月19日、生涯唯一冊という歌集出版の打ち合わせでご自宅を訪問、もう一度は10月29日、『歌集 青打たれいる』が出来上がって(本は直送納品し別途に)伺ったその日──都合70日間で二度である。 初対面の際、少しお話をし、出版用の歌稿を拝見しただけで、加来さんの「歌」とどういう方であるかは感じ取れた。 (あまり使いたくない表現だが)何か運命的なものを感じた、と書くと大仰と思われるだろうか。 その時既に肺癌にて闘病中と伺ったが、実に穏やかで鷹揚なご様子に、それから3カ月足らずだとは……。 歌集巻頭の写真を掲げさせていただく(本ではモノクロ)。 2009年11月撮影。 元々、加来さんをご紹介いただいたのは、小社顧問でもある同じく行橋市の光畑浩治さん。 光畑さんは小社刊行「田舎日記」シーリズ(6冊)の著者であり、小社HPでも「田舎散人のつぶやき」コーナーで京築地域の話題を中心とする随筆を発表していただいている。 加来さんの歌集刊行後、「田舎散人のつぶやき」の一篇として光畑さんから文章をいただいているので、いずれ「田舎日記」シーリズ中に収められる前に、ここで紹介しておきたい。 ───────────────────────────────────────────────── 生涯一冊の歌集『青打たれいる』 光畑浩治 福岡県行橋市寺畔の加来光吉さん(84)が、令和4年(2022)11月1日、生涯ただ一冊の歌集『青打たれいる』100部を限定出版した。その「あとがき」に「本歌集が日の目を見たのは葉山由紀子・奈々母娘、並びに長女照美の執拗なまでのあと押しの賜物です」と記す。彼は、昭和31年(1956)、二十代で郷土の短歌誌『標土』に参加して以来、歌を詠み続け、歌誌『牙』(1956年)や『藍』(1980年)、『群羊』(1992年)の創刊に関わった。京築地域の歌壇の第一人者として活躍してきた方である。 加来さんが日々折々に詠んだ歌は5000首にのぼるというが、歌集は「一五五首に絞る決断」で「一頁に一首」が並んだ。一首が紙面に浮き上がるような特異な造本の歌集だ。 抜きん出て青打たれいる今年竹六日無名の風吹き抜くる 無花果を二つ喰らいて昼飯の代わりとなせり今日終戦日 死ぬことはやはり怖いと唯一度口にせしかどその後は言わず じりじりと石をしばりて咲く花の定家かずらの白ねじり花 静かなる意志持つ如く咲き盛る千女房の山の桜よ ひょうひょうと風吹くらんか熊野灘枯木灘へと指になぞれば 何食わぬ顔の長女の差し入れの水蜜桃を食うはよろしも 死は自然風の如くに吹くものと軒の雀の申したまいき 早き終焉を願う心はひゅうひゅうと鳴る丘の上の風に打たする かくかくに早苗を土に預け終え癌の治療の過程に入る 加来さんは群羊短歌会を主宰。歌の指導に当たったが、 “草花学者” でもあった。 加来さんを師とする故嶋田洋子さん(築上町)の歌集『みぞそば』(2008年刊)に触れ、「みぞそばは継子の尻拭いとおなじたで科の植物で、沖縄を除く全国の湿地帯、多くは田園の溝に群生し、秋には花弁のない花を固まって開く。五枚の蕚片は淡緑色、淡紅色、白色などがあって美しい。蕾の時は金平糖のかたちをしている」などと記した「序」を贈っている。 加来さんは歌の道に徹し、表に出ることなく郷土の歌壇の土台を支えた人と言っていい。 いずれ郷土の歌詠みの随想や論評、草花だよりなどが纏められるのを願うばかりだ。 2022年(令和4)11月20日
by karansha
| 2022-12-14 16:54
| 編集長日記
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