■「永遠に漂いつづける 微粒子の形として この私は」──中村治氏の由布岳画と詩 |









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2023年 11月 19日
![]() ●11月14日 ![]() ![]() 同じ由布岳を描いてもフォルムや彩色は本当に色々だ。 真夏の由布岳/2022/F8 ![]() ![]() ![]() ![]() 中村さんは、2018年に野田修一というペンネームで『夜の鳥』という詩文集を出された。 ![]() 空 いつまでも いつまでも 空を 見ていたい 夕方の空を 朝やけの雲を 灰 いつか私も 風に運ばれ 宇宙の塵となって もう地上に還ることはなくなるだろう 幾人かの人間たちの体内で 私の記憶は宿されるとしても それも 束の間の幻影でしかありえない 風に吹かれ 風に運ばれ 舞い上がる 私の灰 空の彼方で 灰は雲となり 雲は雨となって ふたたび 地上に降りそそぐことは あるだろうか 永遠に漂いつづける 微粒子の形として この私は 幻の少女 明け方の淡い色の雲が かすかな光を孕みはじめるころ 家の近くの道を散歩していると 犬を連れた少年のような少女と出会った 少女のからだは うすい灰色のほのかな影となって 今にも回りの空気の中に溶けてしまいそうにして 私の前に立っていた 少女はカゲロウのように小さく微笑んだ それは実際に微笑んだのではなくて そう見えただけかもしれない それくらい微妙だった 連れていた子犬が催促したので 少女はまた歩きだした 私は振り返って 少女の背中を見た 水色の空の光がかすかに反射した その半透明の白いブラウスを 私はしばらくのあいだ見つづけた 西の空には 細い三日月が 少女を乗せる小舟のように まだ残っていた 放 下 もう 失うものは 何もなくなった 捨てるものも なくなった 耳を澄ますと 水の音が 鳥の声が 聞こえる 透明な大気の中で 太陽は静かに昇り 新しい朝が はじまる わたしは 歌を うたおう 新しい歌を うたおう わたしが わたし自身を 捨ててしまう そのときまで 泥の中から うたいつづけよう この星の下で ぼくは生まれた この星の下で ぼくは死んでゆく 遠い昔の 出来事の ように 詩を朗読中の中村さん。 詩の朗読の間も静かに幽玄な響きが会場に “漂って” いた。 それはクリスタルボウルから発するもので、演奏者は山本香苗さん。 クリスタルボウルなるものを私は初めて見聞きしたが、水晶で作られたボウル型の楽器で、専用のバチ(マレット)で軽く叩いたり、縁を擦って “反響” を生み出すものらしい。 山本さんの優しい手つきでマレットが操られると、色や形やサイズの異なる幾つかのボウルから、まるで無限の彼方へ音の輪が幾重にも広がっていくようだ。 ボウルの傍に手を添えると、空気が揺れていて、音というものが紛れもなく振動だということが実感できる。 朗読では、その宇宙空間的な音色が中村さんの詩の世界にぴったりだった。 会場を出て、久し振りに大濠公園を覗いた。 これも宇宙の中での一瞬の光景。 ![]()
by karansha
| 2023-11-19 14:58
| 編集長日記
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