●1月3日
どんよりとした正月三日。重たるい雲が、いっそ痛快に感じられる。
●1月4日
東京より実家帰省中に一泊でやって来た長男のパートナーと孫を連れて、昨年、「油山牧場・油山市民の森のリニューアル」としてオープンした油山牧場へ。
福岡市のPRによると、
市域の3分の1を森林が占める福岡市では、森林の持つ多面的機能をより高めることによって、快適で豊かな市民の生活を持続的に支えることのできる環境を、次世代に残していくため、みんなで守り、楽しみ、活かす都市・福岡の森づくり「福岡グリーンネクスト」を推進しています。
そのリーディングプロジェクトである油山牧場・油山市民の森リニューアルについては、両施設をさらに魅力ある施設としていくため、昨年から九州旅客鉄道株式会社を代表とするグループとともに、一体的な運営を含めた再整備に取り組んでおりましたが、このたび、ABURAYAMA FUKUOKAとしてリニューアルオープンしました。
ということのようで、まあ、どんなものか覗いてみようかと。
詳しくは、https://www.fukuoka-now.com/ja/abybnf/を見てもらえばいいけれど、まあ、私には関係のない世界、と感じたことだけは確かだ。
この「ABURAYAMA Fukuoka」の施設屋上から市街地方向を眺めていて、ふと、逆方向に眼を転じると、「油山平成御廟」という大きな看板が眼に入った。
ちょうどこの施設の真向かい(背後)だ。
この霊園内の一郭に、かつての葦書房社主・久本三多氏が眠っていることを思い出した。
其処は「港が見える丘」の上ではないが、チラリホラリと花片(びら)を振り撒く桜樹の下であることは間違いない、久本氏のお墓をちょっと訪ねてみようという気持ちになった。
私自身はこんな所に押し込められるくらいならどこかにばら撒いて欲しいけれど、永眠地のロケーションとしてはなかなかいいのかも知れない。
●1月5日
まるでザトウクジラが浮かんでいるような。
穏やかに暮れて。
●1月7日
昨年秋から「宗像泊まってんキャンペーン 第4弾」として宗像市内の宿泊施設の「宿泊助成&地域クーポン」が実施されているということで、県内近場だけれど、折角だからこの機会に筑前大島に行ってみようと思い立った。
私自身は神仏を拝みも恃(たの)みも有難がりもしないが、大島には宗像大社中津宮と沖津宮遙拝所(世界遺産の構成遺産)が鎮座する。
大島渡船ターミナルから眺める海。一郭に光が射している。向こうが大島だ。
中央部が御嶽山(みたけさん/224m)だろう。
大島渡船ターミナルで待ち合わせて、軽自動車のレンタカーを借りる。反時計回りで周回しようとすれば、すぐさま「夢の小夜島(さよしま)」に。季節柄かも知れないが車の通りは少なく、道幅からしても軽自動車向きだ。
適当にアップダウンもある。
島を縦断すれば、沖津宮遙拝所下の海岸。
如何にも玄界灘という感じ。
やや強い海風、次々に波が押し寄せてくる。
一旦、島の中央部に戻る形となり再度海岸線に出れば、風車展望所・砲台跡。緩やかな斜面は広々として気持ちがいい。左手が砲台跡。砲台跡から風車を望む。
風車の向こう、水平線に沿って視線を横に滑らせていると、次第に慣れてきた目に島影が立ち上がる。
沖ノ島がくっきりと見える日はそう多くないらしい。
雲の大きさが嬉しい。次に、島で一番高所にある御嶽山展望台に。東方向を眺める。
左手は地島。
大島灯台はちょっと最果てムード。
灯台下からも遙かに沖ノ島が見える。
宗像神社中津宮。
そして渡船場に戻る。
昼食を含め、渡船場をスタートして2時間半か。
ちなみに昼食は、夜が魚料理で鳴らしている宿なのでチャンポンにしようと、渡船場近くの一角にある昔ながらの風情の喫茶店に入ったが、正月で麺屋が休んでいて麺が入荷していないので、看板商品の(らしい)チャンポンが作れない、とのことだった。
仕方なく焼き飯に(それなりに美味しかったので、チャンポンも期待していいはずだ…ヨイショ)。
ふと、店の壁の落書きを見ると、安部晋三・昭恵夫妻のサインが。
へえー、どうしてここに? と尋ねると、お忍びだったらしいのだが、この島で晩年を過ごして没した阿倍宗任(平安時代中期の武将、1067年に大島配流)の墓参りのつもりだったようだ。
なお、妻はチャンポン、夫は焼きそばを食べた、と(別に知らんけど)。
分厚い雲のカーテンの下からいつまでも茜色が覗いていた。
今夜の泊まりは大島渡船場から車で5分、神湊(こうのみなと)の「魚屋(うおや)別館」。そこのテラスで、波の音と見事な落暉(らっき)を楽しむ。 何かの終わりは、何かの始まり。
●1月8日
旅館玄関から見る早朝の雲。静かだが確実に波が寄せる朝。
いつごろからだろうか、私は朝も好きになってきた。
さて、朝の9時から賑わっている道の駅を出た後、宗像の二日目をどう過ごそうかとぼんやり考えながら車を走らせていて、たまたま「新原・奴山古墳群」の看板が眼に入った。
この付近を走っていてこれまで何度か目にしてきたものではあるが、今日は天気も回復しそうなので散策にちょうどいいかな、と。
即ち私は、散策の起点・古墳群展望所に置いてあるパンフレットを見るまで、この辺り、それこそ昨日走り回った大島の宗像大社関連施設やこの新原・奴山古墳群を含む一帯が、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群としてユネスコ世界遺産となっていることを全く意識しなかった。
図らずも今回の宗像行は、福岡県内世界遺産の二つの内の一つ、その “王道” を行くような旅になった。
新原・奴山古墳群を俯瞰する。
海に浮かぶのは、どこまでもやはり大島。
最早ヒバリが鳴いてもおかしくなさそうな天気だ。死んだ後まで権力を誇らなければいけない者たちの、いやその取り巻きや後釜たちの…痕跡。
さて、この仰山な赤い実は…?
典型的な前方後円墳。