［編集長日記］図書出版 花乱社

■私たちは別々の家で別々の物語を生きていた──谷川俊太郎詩、そして週替わりの夕暮れ［4/26・27・30］

●４月26日
事務所窓から見る夕景。
●４月27日
バス車中から。二日酔いの目を醒まさせられる色。

●４月30日
日曜の朝刊を取りに出て、ふと雲に気づく。

我が家玄関のそれぞれの自己主張。

ご近所にて。

夕暮れウォーキングにて西ノ堤池へ。
ここでもてんでに。

陽の当たる場所では。

どこかでヒバリが鳴いている。

池周囲９周目でようやく満開のサルスベリに気づく。

私にはベトナムが思い浮かぶ。

　　日々
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　谷川俊太郎
　私たちは別々の家で別々の物語を生きていた　雨だれが聞こえる朝　風が窓を鳴らす午後　その終わりがただひとつであることを知らずに　あなたの眠らなかった夜を私は眠ったが　私の知らないあなたの日々は　私の見た夕焼け雲に縁どられていた

■明日 風が吹いてたら 君をつれて野を歩こう──井上陽水詩、そして週替わりの夕暮れ［4/20-23］

●４月20日

福岡市西区内にて。

大きな花……当てずっぽうで、アヤメか。

●４月21日
事務所窓から。

●４月22日
今年の高校同期会の打ち合わせで小倉へ。高速バス車内。海が輝いている、ただそれだけで満たされた心地がして。左遠方が能古島、中央やや右手が志賀島。

会議が終わり、一息入れにテラスへ。

【参考：以前書いた同窓会関係記事】＊同窓会における、記憶喪失のリハビリ・レッスン［2011.6.14］
＊還暦同窓会──「異人」たちとの夏のひととき［2013.8.11］＊小倉・紫川河畔での「還暦＋１年」高校同期会［2014.6.5］＊高校同期会、そして命を謳う夕暮れ［2016.7.18］＊真夏の高校同期会［2017.7.20］＊私の好きな空と雲、そして高校同期の仲間たち［2018.7.17］＊６年目の高校毎年同期会、そして週替わりの夕暮れ［2019.9.16］＊そういえばいつもすぐ傍に川の流れがあった［2022.9.25］
●４月23日夕方５時にウォーキングに出発。まず寄り道をして近所の塀を愛でる。

はて、上のとは花びらの形が違うが……。

やや放置している観が好ましい。

花のことでは誰も文句は言わないだろう。

　　もしも明日が晴れなら

　　　　　　　　　　　　　　　　井上陽水
　明日　風が吹いてたら　君をつれて野を歩こう　君の髪が風とあそび　ほほにふれ輝く　それは僕を夢にはこぶ　もしも明日が晴れなら
　明日　雨が降ってたら　外へ出すに家に居よう　君の声が雨の音と　快く重なる　それは僕を恋にさそう　もしも明日が晴れなら
　明日　空が晴れてたら　時を忘れ話し合おう　いつのまにか夜になって　君はとてもおどろく　それは僕を愛につなぐ　もしも明日が晴れなら

色々たぐり寄せようとしているのか、何かにまとわりついて逃げ出そうとしているのか。

これも鱗雲…か。

■橋爪大三郎氏『権力』、到来！

岩波書店より「著者代送」で、橋爪大三郎著『権力』（318ページ、上製本）が送られてきた。橋爪さんからご著書をお贈りいただくのは久方ぶりだ。ライオンとペリカンの会の講演会で来福された時代のことをきちんと覚えていただいていることに感激。美しい造本だ。装丁者の名前がないところからすると、編集部で考えられた意匠か。　『権力』はずっと、書きたいと思ってきた書物、書かなければならないと思い続けてきた書物である。本書を今回刊行することができて、とても嬉しい。　私の社会学の構想は、一九七〇年代の終わりには、大枠がだいたい出来あがっていた。社会は、身体の集まりである。その身体のあいだを、言語、性、権力の三つの作用が結んでいる。（略）　このうち権力が、いちばん扱いにくかった。（略）
　『権力』は何回も、草稿を書き始めては仕切り直し、を繰り返した。（略）書き終わってみれば、昔に予想していたより、ずっと素直でシンプルな議論になった。多くの人びとに共有してもらうには、これでよかったのだと思う。　こんなことなら、なぜ最初から素直に考えなかったのか、と誰だって思う。それができるようなら、苦労はいらない。ともかく、人びとにたたき台にしてもらえそうな権力の理論を、提供することができて安堵している。（略）　最初の構想から考えれば、四〇年かかって、やっと宿題を果たすことができたような気がする。その昔、社会学を志す人びとは、みな理論を目指した。やりがいのある冒険だった。大学院や言語研究会や小室ゼミや、そのほかさまざまな機会に議論した多くの仲間たち。いちいちお名前をあげないが、この場を借りて感謝したい。　時代は移り、理論をやろうという人びとが少なくなったという。残念である。本書がなにかのきっかけとなって、理論で暴れ回ろうという人びとがまた現れるのなら嬉しい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　──「あとがき」より
実に「素直な」あとがきだ。四十年かけて考えてきたことを、この時代に「理論」の形で世に問う。橋爪さんの勇気と頑固さ。出版者として襟を正したい。

■藪椿の落花・落葉が盛大に迎えてくれる金山登山

●４月17日
春の一日、脊振山系の金山（かなやま　967.2メートル）へ。同行は娘。彼女の休日となかなか折り合いがつかず、結局、月曜日を充てることに。出発地は早良区の坊主ケ滝近く、林道脇の空き地。前回ここに来たのが11年以上前。　→バッハへ平均率のような金山行［2011年11月４日］
登山口前の林道にクロスする形で新しくて立派な林道が付けられている。どこぞの総理大臣を輩出した（どんな山中でも立派な舗装路が整備された）県のことを思い出す。このごろはスマホのGPSもあることから登山ガイドブックも以前（20年以上前）ほどには売れていないように思うが、Googleマップなどでは踏み跡に近いものを含めた登山道は出てこないだろうから（私はスマホ不所持につき詳しくは知らない）、最後はやはり白地図（地形図）が必要かも知れない。

登山口からしばらくは杉林の中の小径を進む。

今回のルートなら山頂までのほとんどの道の様子を思い浮かべることができると思っていたが、登山道が広げられたり、踏み跡が深くえぐられたりしたせいで脇道や迂回路が作られたりもしているようだ。

こんな荒れた急坂もある。

峠に出て、そこから先は、アップダウンは少ないが、遠く近く沢の音を聴きながら歩く小径となる。

年季の入った苔、清冽な水飛沫。

登山道にはずっと、藪椿の落花が点々と。それに、おそらく藪椿の葉だろう、乾いた落葉がびっしりと幾重にも散り敷いている。相当な回数この山を訪れたが、ここまでの堆積路は記憶にないように思う。落葉の絨毯のようで心地いいなと私は思って歩いていたが、どうやら娘は、谷沿い斜面に付けられた小径（踏み跡）が落葉で滑りそうなのを恐れているようだった。藪椿の群落中で行き合った単独行の壮年男性も、「いつもより登りに30分は余分にかかった。落葉の下の石や窪みにも注意した方がいいですよ」と12時半頃、金山山頂に。
休み休み来たので、登山口から２時間40分程かかった。他には誰も居ない。途中、右臀部が幾らか痺れたが、脚も攀（つ）らず、膝も痛まなくて良かった。

山頂から北側、福岡市方面を望む。

同じく北側。山頂を脊振山方面へ少し下った所で食事にする。脊振山方向より夫妻らしき中年カップルが現れる。そうか、先程頂上直下でキラキラした成分が含まれている石をいくつも見掛けたが、あれが結晶片岩だろうか……。

これは、低地ではあまり見ないように思うが…。

立派な標識が立てられている。空を見上げて、春もいいかな…とつい思ってしまう。

鶯の声も心地良さそう。
ミツバツツジだろうか。これぐらいが清楚でいいね。さて…。
ねじり棒のような、「よりより」（唐人巻）のような。藪椿落花。
登山口から全行程の三分の一程登った峠の所で、女性二人が腰を落として何やら真剣に捜し物をしている。ワラビが顔を出しているような草むらではない。訊けばその内の一人がピアスを一つ落としたことに気付き、おそらく先程弁当を広げた辺りではないか、と戻ってきて捜索中だと。陽気な二人だ。うーむ、ここでピアスね、それはちょっと無理かな……。買ったばかりで無念だろうけれど、「気をつけて下山して下さい」と言って別れた。
↓下山口付近にて。下山地点で車を出そうとしていると、最前の二人が登山口から降りてきた。伝え忘れていた言葉──「今度から山にはピアスをしてこないように」と声を掛けたのは勿論だった。

【全くの余談】少し前に神戸に行った娘が持参した日本酒。「純米酒 神戸の灯」

　［4/23最終］

■存在感たっぷりの柴桜と森山安英作品「非在のオブジェ」と

●４月11日やはりあそこの芝桜は気になる。西区生の松原「ケアハウス桜ガーデン」近くの路傍。

ケアハウスの庭にて。

えらく大きな牡丹の花。

●４月15日

森山安英氏の個展に。

これがギャラリー「OVERGROUND」の入り口。セブン-イレブンの２階にある。森山さんの個展に似つかわしい会場だ。

森山さんの作品をテーマごとに抜粋しているようだ。私の好きな「非在のオブジェ 29」（1997年）。
「ストロボインプレッション 24-1」（1997年）。
同じギャラリー内の別の個展。「Simon-Spring Show 2023」このソファは愉しい。
外に出ると、すぐ傍に菅原神社（祭神：菅原道真）。無機質、それにポップな現代アートを観た後の──光景への不思議な違和感。