［編集長日記］図書出版花乱社

2023年 02月 19日

■工芸品のようなお宝仕様の紙函に入ったプレゼントが――週替わりの夕暮れ［2/13-19］

●２月13日
事務所に送られてきたのは、実に可愛らしい函（はこ）に入ったクッキーの詰め合わせ。西宮市の「TSUMAGARI（ツマガリ）」という店のもので、あの通天閣氏からのプレゼントだ。　→新春大阪一泊行――「通天閣」問題と日欧版画（ロートレック、ミュシャ／写楽、北斎）の旅

私の方は、大阪旅行後、18歳まで大牟田に居たという通天閣氏に、「周りの方に、福岡ってこんな所です、とご紹介下さい」と『フクオカ・ロード・ピクチャーズ』（川上信也写真集）を贈らせていただいた。

　→参考：『フクオカ・ロード・ピクチャーズ』に寄せられた声から

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それにしても、クッキーは勿論美味しく頂いたが、不肖の息子だとしても函屋（製函業）を営んでいた家に生まれた者として、この函にはいたく感じ入った。

蓋にも身（と言っていたか…）にも、内外共に芯ボール紙に綺麗なオレンジの色紙が貼られ、蓋にはさらにその上にエンボス加工や金箔押しが施されたカラー刷りの紙が貼られている。函自体が工芸品と言ってもいいようなお宝仕様だ。
よく女性たちはお気に入りのショップの紙袋を持ち歩いているようだし、本の世界でも “ジャケ買い”（ジャケットに惹かれて買った）と言うように、この函が欲しくて買った（これも “函買い” か？）という人も居そうだ。

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身の内側には、緩衝材として（クッキーは割合にもろかった）波打った紙が貼り巡らされている。

この紙も、細かい設計に基づき宛てがわれているようで、簡単には引っ張り出せない。

この函、元気な時代の父（既に半世紀前）が見たら喜んで、きっと拵え方を知ろうと分解したことだろう。

　参考→いつの間にか父を超えていた［2013.10.5］

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●２月15日

何だか焦点が合わない夕べの空。

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●２月16日

そのまま宇宙空間に繋がっているような、雲一つない夕暮れ。

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●２月18日

久し振りに福岡地方史研究会の例会が催された。

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●２月19日

我が家の鉢植え枝垂れ梅。年々、花の数が減っているようで……地植えすべきなのか？

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２週間ぶりの夕暮れウォーキングに。

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西ノ堤池の花壇。

毎年、ここで見掛ける葉牡丹。

どうもこの花が好きな人が近所に居るようだ。

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こういうゴージャスなのもある。

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どことなく春めいてきて。

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　［2/22最終］

# by karansha | 2023-02-19 23:11 | 編集長日記

2023年 02月 12日

■「海にゐるのは、あれは人魚ではないのです。」――中原中也「北の海」、そして週替わりの夕暮れ［1/12］

かなり湿気を含んだ雲が空を覆っていたので些か躊躇われたが、歩くことでしか散じることができなさそうな鬱屈もあったので、出で立ちを整えさあ出発と勇んで家を出た途端、静かに、でも確実に雨が落ち始めた。ウォーキングは天気と体調に恵まれないと楽しくないので、残念だが取り止めにして、しかかっていたDTP仕事に戻る。
結局、今週（６〜12日）はただ１カ所でしか写真を撮らなかった。箱崎埠頭にて。

　　北の海

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中原中也
　海にゐるのは、　あれは人魚ではないのです。　海にゐるのは、　あれは、浪ばかり。
　曇つた北海の空の下、　浪はところどころ歯をむいて、　空を呪つてゐるのです。　いつはてるとも知れない呪。
　海にゐるのは、　あれは人魚ではないのです。　海にゐるのは、　あれは、浪ばかり。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（『在りし日の歌』より、1935年）

　（お天気の日の海の沖では）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中原中也

　お天気の日の海の沖では　子供が大勢遊んでゐるやうです　お天気の日の海をみてると
　女が恋しくなつて来ます
　女が恋しくなるともう浜辺に立つてはゐられません　女が恋しくなると人は日蔭に帰つて来ます
　日蔭に帰つて来ると案外又つまらないものです　それで人はまた浜辺に出て行きます
　それなのに人は大部分日蔭に暮します　何かしようと毎日々々　人は希望や企画に燃えます
　さうして働いた幾年かの後に、　人は死んでゆくんですけれど、　死ぬ時思ひ出すことは、多分お天気の日の海のことです　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（未刊詩篇より、1934年11月29日）

# by karansha | 2023-02-12 21:17 | 編集長日記

2023年 02月 05日

■異国の池のほとりで哭（おら）ぶ夜――そして週替わりの夕暮れ［1/31-2-5］

脳の中でも見ているが如し。

●１月31日
春日市の障害者自立支援施設で出版の打ち合わせ。最近購入したばかりの新規の施設は、鄙びた池のほとりにある。庭に植わっていた枝の赤さが気になる木は、モミジだという。最初から葉が赤黒いモミジは知っているが、枝が赤いモミジは見たことがない。

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職員による多肉植物の寄せ植えか。

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●２月１日
一頃より陽が長くなってきた。

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●２月３日
鱗雲未満。

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●２月５日

裸の枝の豊饒。

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この時季に何とか見つけた花。

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私のウォーキング基地・西ノ堤池（城南区）のたもとに植わっている柳。

先週開催した「ささのや会」中の雑談で、この柳の枝の幾つかのもつれを、風のせいかどうかと話題にした。

数年前にだいぶ伐採されて柳は１本のみとなったが、伐採前の他の柳でもこの小さな巣の如きもつれを見掛けた。

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ここまで丸裸の如く刈り込まねばならないか。

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最大周囲800メートル程の池をいつも９周もしくは10周するのだが、今日は３〜４周するうち、池傍の叢の一角に男性が一人坐り込んで何やらしゃべっているのが聞こえてきた。

かなりの大声と早口の様子は、如何にも誰かを、或いは何かを罵っているふうだ。

遠目だが40歳前後か、500cc缶ビールを呷り、忙し気に煙草を喫っている。そばのビニール袋には缶ビールが何本か入っているようだ。
時々首を回して周囲を窺い、また大声を上げる。どうやら、日本語でも、中国語でも韓国語でもなさそうだ。二度訪れただけだがベトナムの言葉でもなさそうで、マレーシアとかインドネシアの言葉なのか……。言葉の分かる人間に聞かれることを恐れながら、「日本人の、バカヤロー！」とでも言っているのか。
10周目の時には姿が見えなかったが、一人で議論をしているような、なかなかの饒舌と執念だった。この池が色々な人の役に立っていることを確認できた夜。

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それでも一日は終わる。

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低い位置に大きくて丸い月が現れた。

明日昼が満月だとか。

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# by karansha | 2023-02-05 23:22 | 編集長日記

2023年 01月 29日

■モノトーンの空の下で――週替わりの夕暮れ［1/24-29］

●１月24日久し振りに積雪の予報が出た朝、事務所から。

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●１月27日

ピンク色をした暗雲が。

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●１月29日さて、今年に入って、西ノ堤池へのウォーキングはいつからか……などと考えつつ歩き始める。

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辺りはブルー・シャトーならぬブルー・シャドウと言いたい空の様子だ。

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油山も闇に沈み始めた。

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私の進む道。そうか、ウォーキングは１月３日以来だ。道理で、ステップの昇降を繰り返す体が少し重たい。

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空の底が抜けたのか、天井が開かれたのか。

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# by karansha | 2023-01-29 23:16 | 編集長日記

2023年 01月 22日

■団塊世代のピンヒール――週替わりの夕暮れ［2023.1.5-22］

●１月５日
もう旧聞に属する話かも知れないが、この日の朝刊見開き広告は忘れ難い。この国の出版社は「角川」みたいなのばかりではないぞ、と宝島社。
かつてこんなにも疎まれながら、たくましく生きてきた世代があっただろうか。団塊は、他の世代にとって永遠のヒール＝悪役だ。彼らは年を重ねてなお、他人におもねることはしない。いまだに野心でギラギラしながら、高齢化という時代の主役を張っている。団塊よ、どうか死ぬまで突っぱって生き切ってくれ。他の世代を挑発し続けてくれ。表舞台から去るのはまだ早い。ナースコールの前にカーテンコールだ。あなたたちの生き様に嫉妬をこめて、盛大な拍手をおくらせてほしい。　　宝島社

この広告は、団塊世代への最高のオマージュではないか。

私は団塊に少しだけ遅れてきた世代だが、その文体・用字用語の嗜好――「疎まれ」、「他の世代」、「生き切って」、「し続けて」――から推して、このコピーの原案を書いたのは自分と同世代の者ではないかと感じる。

そう、私にとっても、団塊世代にはまだまだ“先駆的”であってもらいたい。

どこか尖った兄ちゃん、姉ちゃんでいてほしい。

退陣にはまだ早い。

ちなみにこのピンヒールの女王は中尾ミエ、団塊真っ只中の74歳だとか。